逆に、個人の体内時計をきっちり把握できれば、さまざまな不調や疾患の改善、パフォーマンスの最適化に役立てることができる。体内時計を実際の時計のように目に見える形にできたならどれだけ便利なことか。それを初めて実現するデバイスが開発された。
業種業界にとらわれない発想と具現化を目指して商品開発を行うサンワイズは、身体に貼り付けて体温変化を連続的に計測できるモニタリングシステム「ハルシェ」を開発した。表皮体温の連続的な時系列データを用いて概日リズムを可視化するもので、筑波大学と共同でデータ解析を行い「人類のさまざまな課題解決」に活用できるアルゴリズムを導き出したということだ。
直径25ミリのコイン状の装置をテープで身体に貼り、5分ごとの体温偏移データを収集する。データはクラウドに送られてAIが解析し、さまざまに役立てられる。共同開発者の筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構、史蕭逸氏は、概日リズムの可視化が不眠問題に新しい解決策をもたらすと期待を寄せている。
また、筑波大学高精細医療研究開発センター、夏目徹氏は、ローコストな使い捨てデバイスで概日リズムを可視化できるのは「大変画期的」と称賛している。うつ病の早期治療への介入、認知症発症予測や予防、出産期の母体と乳児の異常検知などの可能性があり、肥満や糖尿の発症に関係するとされる「社会的時差ボケ」(体内時計が社会生活と合わずに生じる慢性的な睡眠不足)の可視化も行えることから、将来的に「ヘルスケアの社会インフラ」になるとも話している。
パイロットスタディーを実施した福岡大学医学部、永光信一郎氏は、急増する子どものメンタルヘルス疾患の原因ともなる概日リズムの乱れを可視化できれば、子どもたちの新しい治療戦略を生み出す可能性があるとも指摘している。
とにかく、体内時計を可視化するというのは革命的なことのようだ。サンワイズは筑波大学と共同で「ハルシェ」の特許を出願している。
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