38.ワインはいきなり飲むな
「料理の香りを取れ」で述べたとおり、味覚とは舌先のみではなく五感の集大成です。加えてワインの価値の半分は香りです。いきなり飲み下すのではなく、まずは香りをお楽しみ下さい。39.グラスをグルグル回すな
ブラインドテイスティングなど、ワインの特徴を瞬発的に把握しなければならない場合に、グラスをグルグル回してワインを強制的に空気に触れさせる場合がありますが、普通の食事においてはまず必要の無い行為です。スパークリングワインは下から泡が立ち上ってくるのでそもそも不要。白ワインは一般的に空気に触れてどうのこうのというモノではないから不要(万一そのようなワインである場合はソムリエが最初からデキャンタージュを提案してくれる)。偉大な赤ワインに限ってその可能性は無くは無い。しかしながらそのようなワインは食中における状態の変化を楽しむべきであり、無理矢理空気に触れさせグチャングチャンに混ぜて抉じ開ける必要はあるのかなあ、というのが私の意見です。
40.ワインは自分たちで注ぐな
原則的にワインはソムリエが管理しているのでこのような状況はまず起こりえないのですが、ごくたまに日本のビール文化に慣れ親しんだ年配の方が「いやあ、どうぞ1杯」などとやっていますが当然NGです。追加で注いでもらいたい場合は、空のワイングラスを手に持ち給仕に目配せするだけでOK。間違っても「すみませーん」などと大声で呼びつけないように。
41.パンでソースを拭うのは賛否両論
パンは料理と料理の間に口にして口腔内をリセットするのが本来の役割だそうですが、ソースや肉汁に惚れ込んだ場合はパンで拭い取りながら、余すところ無く楽しみ切るのもアリでしょう。「エレガントでない」と眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、料理人の立場からすると、きれいサッパリ食べ切ってもらったほうが心躍るというものではないかなあ、と私は考えています。
したがって、接待など外形が重要視される会食の場ではパンでソースを拭ったりせず、気の知れた家族や恋人・友人との食事の際は、のように使い分ければ良いと思います。
42.食べ終えたカトラリーは揃えて午後4時に置け
料理を食べ終えた際、使用したカトラリーは揃えてお皿の午後3~4時の位置に置きましょう。これは「食べ終えました」のサインであり、給仕は黙ってお皿を下げてくれます。ハの字型にフォークとナイフを置くと「まだ食べてますよ」のサインであり、その場合、給仕が皿を下げることはありません。いずれの場合もナイフの刃は自分に向けておくようにしましょう。このように、テーブルマナーとは、テーブルにおける会話を中断せず、お店側と言葉を交わさずともこちらの意思を伝えることができるという、非常に便利なツールでもあるのです。
43.落としたカトラリーは自分で拾うな
万一カトラリーを床に落としてしまった場合でも、自分で拾ってはなりません。給仕に目で合図すれば、黙って新しいカトラリーに交換してくれます。ナプキンを落とした場合も同様です。これも昔の名残であり、『カトラリーを拾うフリをして足元に隠し持っていた武器を取り出し襲い掛かる』可能性を排除するためです。
筆者=タケマシュラン。レストラン紹介メディア「タケマシュラン」運営。日本ソムリエ協会ワインエキスパート、SAKE DIPLOMA。C.P.A.認定チーズプロフェッショナル。