ISS宿泊料金は、2週間で45億円?
世界で初めて私費によるISS滞在旅行を実現したのは米国のデニス・チトー氏。彼は2001年に宇宙旅行代理店スペース・アドベンチャーズ社(米国企業)を介してロシアのソユーズTM-32(往路)とTM31(復路)の座席を購入し、約1週間に渡ってISSに滞在した。彼はそもそもNASAの一機関であるJPL(ジェット推進研究所)に所属し、史上初めて火星に到達したマリナー4号(1964年打ち上げ)などの軌道計算を行った人物である。退職後はその技量を活かして投資コンサル会社を立ち上げ、莫大な財を成した。彼がISS滞在のために支払った総額は、当時の2000万ドル(24億2000万円/1ドル121円換算、2001年平均レート)と言われている。
自費でのISS滞在を唯一2度実行したチャールズ・シモニー氏は、2007年と2009年にISSに滞在している。ハンガリー人である彼は、カリフォルニア大学バークレー校で数学を学んだ後、マイクロソフト社でExcelやWordを開発した人物だ。
彼はISSの渡航費に関して、1度目は2500万ドル(29億5000万円/1ドル118円換算、2007年平均レート)、2度目は3500万ドル(41億3000万円/1ドル118円換算、2009年平均レート)と公表している。
当時、ISSへの滞在サービスは、財政難に陥ったロシアによって外貨獲得のために行われていた。しかし、そのサービスは2021年の前澤友作氏、平野陽三氏の2名によるISS滞在以降、行われていない。それは当然ながらウクライナ戦争の影響でもある。
前澤氏は12日間にわたるその旅費を公表していないが、報道された限りでは1名45億円という価格がもっとも信憑性が高い。つまり前述したチトー氏の2001年当時と比べると、ISS宿泊費は20年間で約2倍に跳ね上がったことになる。
ISSは、機首側の米国区画と、後部のロシア区画に分かれているが、かつてロシアが行っていたISSサービスでは、渡航者はソユーズに搭乗し、ロシア区画のプライベートエリアが提供された。
しかし、そのサービスが途絶え、NASA、スペースX社、アクシオム社の3組織による新たなISS旅行サービスが始まった現在、渡航者は米国区間の個室に滞在することになる。つまり、ウクライナ戦争と前後して、ISS宿泊ツアーのプロバイダーはロシアから米国にシフトしている。