ノルウェー公衆衛生研究所は、国内で長期にわたって実施されている大規模な母父子コホート研究に参加している無月経の女性2万1000人以上を対象に調査を実施。対象者には、閉経期(更年期)の女性、閉経周辺期(閉経前後の数年)の女性、ホルモン避妊薬の使用などにより無月経となっている閉経期前の女性の3グループがほぼ同数含まれている。
オープンアクセス誌Science Advancesに掲載された研究結果によれば、過去8~9カ月間に不正出血が起きたと回答した割合は、閉経後の女性で3.3%、閉経周辺期の女性で14.1%、閉経期前の女性で13.1%だった。こうした不正出血のうち、ワクチン接種から4週間以内に起きたものの割合は、全グループで約50%だった。接種から4週間以内に不正出血が起きる確率は、閉経後の女性で接種前の2~3倍、閉経期前と閉経周辺期の女性で3~5倍に増加していた。
因果関係は未確認
ただし、論文の著者らはこうした結果について、ワクチン接種と不正出血の間に因果関係は確認されておらず、示されているのは関連性にとどまるとしている。そして、ワクチンに特定のリスクがある、または合併症を招いていると受け止めるべきではなく、接種を避ける理由とすべきではないと強調している。2022年に発表された別の同様の研究でも、新型コロナウイルスのワクチン接種後に不正出血があったことを報告する女性は、もともとの生理の有無にかかわらず、増加していたことが確認されていた。この研究結果では、考え得るいくつかの原因についても論じられているが、より重要なのは、研究者らがさらなる研究の必要性を強く訴えていたことだ。
ワクチンの接種が開始された2021年前半には女性たちから、脇の下のリンパ節の腫れが報告されていた。これは、乳がんが進行していることを示す兆候の場合もある症状だ。不安を感じ、スクリーニングや、緊急のマンモグラフィ検査(乳房撮影検査)、侵襲的な(身体に負担をかける)検査を受けた女性たちも多かった。
米国のSociety of Breast Imaging(乳房画像診断学会)は当時発表した声明で、乳がんの定期画像検査の予定がある女性は、新型コロナウイルスのワクチンを接種した後は4~6週間の間をあけて検査を受けるよう呼び掛けた。そして同時に、気になる腫れや「しこり」などを見つけた場合には、接種してからの期間にかかわらず、速やかに診察・検査を受けるよう促していた。
定期的な生理がない女性にみられる不正出血は、良性・悪性にかかわらず、腫瘍ができている徴候の可能性がある。生理がある女性の場合も同様だが、さらにそれは、子宮内膜症やホルモン異常など、他の疾患が原因となっている場合もあり得る。また、男性でも女性でも、乳房周辺のリンパ節に異常があれば、乳がんが疑われる場合もあるかもしれない。
こうした問題に対応することは、危険因子をより適切に特定することにつながるだろう。また、ワクチン接種であれ治療であれ、それらによって引き起こされるさまざまな生理学的事象がより慎重に特定、認識され、研究されていくとの安心感を提供することにもつながっていくと考えられる。
(forbes.com 原文)