白鶏峰は主に砂岩でできており、少量の花崗岩が混ざっている。砂岩は、5億年以上前に浅い海で堆積してできたものだ。のちの地殻運動により、堆積層が傾いて折りたたまれ、山脈が形成された。
地球にあるほとんどの山脈は同じように形成されたものだが、白鶏峰の山頂は、幅1.6kmの間隙で隔てられた2つの峰(前白鶏峰と後白鶏峰)に分かれており、これは地殻運動でできた構造とは考えにくい。
この変わった形状に興味を引かれたのが、北京高圧科学研究センターの陳鳴(Ming Chen)と毛河光(Ho-kuwan Mao)を中心とする研究チームだ。白鶏峰山頂付近に散らばる角礫を調べた同チームは、小惑星などの天体が地球に衝突したときにしか生じない衝撃変成作用の証拠を発見した。
世界ではこれまでに200カ所の衝突クレーターが確認されているが、中国で確認された衝突構造は2つしかない。
そのうちの1つが、遼寧省にある直径1.8kmの岫岩(しゅうがん)クレーターだ。正確な形成時期はわかっていない。また黒竜江省では2021年、一部が地中に埋もれた盆地が、天体衝突に由来するものだと確認された。この直径1.85kmの依蘭クレーターは、深さが300mを超えるところもあり、過去5万年以内にできた可能性が高い。世界的にみて極めて新しい部類の衝突クレーターだ。
さらに、今年発表された論文では、磁場および重力データの変則値からすると、中国北西部のバダインジャラン砂漠の地下にも衝突構造が存在する可能性があるとされている。
地球に天体が超高速で衝突すると、岩盤で衝撃変成作用が生じることがある。そうした岩石では、衝撃波により、結晶の内部にまで変形が生じ、平面変形ラメラ(planar deformation lamellae)と呼ばれる直線的な破断パターンを形成する。
白鶏峰の砂岩中に保存された石英結晶を顕微鏡で調べたところ、そうした一連の変形構造が見つかった。研究チームの主張によれば、白鶏峰頂上で見つかった、まだ鋭い縁や角の残る角礫は、衝突により放出された岩石断片である可能性が高いという。
白鶏峰の花崗岩は、1億5000万~1億7200万年前のジュラ紀に形成された。したがって、白鶏峰の衝突構造は、その花崗岩の形成後にできたと考えられる。
衝突場所を覆う岩石断片の形状が新しいことからすると、若い年代である可能性が極めて高い。白鶏峰の衝突構造は、黒竜江省にある依蘭クレーターと同様に、過去10万年以内に形成されたと研究チームは考えている。
研究結果をまとめた論文「Discovery of the Baijifeng impact structure in Tonghua, Jilin, China(中国吉林省通化市の白鶏峰における衝突構造の発見)」は、学術誌Matter and Radiation at Extremesに2023年9月5日付で発表された。
(forbes.com 原文)