改善ができない仕事はない
最後に紹介するのは、(3)のそれぞれの領域で着実に仕事を改善・改革した仕事人の4人だ。愛知県豊田市の上下水企画課の岡田俊樹は、全国で初めてアメリカ企業が開発した「AI水道管劣化予測診断ツール」を導入、水道管更新計画の基礎資料を作成した。また、同じく全国で初めてイスラエルの企業が開発した「衛星画像のAI解析による漏水検知技術」も導入。漏水調査対象距離を約1/10に絞り込むことで調査期間を約20カ月短縮、調査費用を約1億円削減した。加えて、この取り組みを踏まえて更に漏水調査を効率化するため、JAXA認定ベンチャー企業等と「漏水リスク評価管理システム」を構築検証、実用化の基礎をつくった。
福井県坂井市の小玉悠太郎は、ふるさと納税の実績を396万円(2015年度)から、15億290万円(2022年度)と急伸させた。
小玉はただ寄附を集めるだけでなく、市民をメンバーに含めた検討委員会で、ふるさと納税の使い道を決定する取り組み「寄附市民参画制度」を活用し、70以上の市民提案を事業化につなげた。プライベートでも約1万3000人の来場者を集めた「Fukui Coffee Festival」の実行委員として、クラウドファンディングの資金調達を担当し、500万円以上の支援金を集めた。
西東京市の海老澤功は2023年4月に公立保育園を民間団体に有償譲渡し、年間約1億300万円の市負担を軽減、また土地を貸付することで園運営の永続性と年200万円の財源を確保した。保育園の民営化は、自治体にとってコスト削減等のメリットがあるが、運営法人やこども・保護者へのメリットは通常あまりない。しかし海老澤の企画と算段によって、保育園を取得した法人には年間約400万円の交付金が加算され、運営予算も増加。類まれな三方よしの事例をつくった。
最後に紹介するのは、新潟県の市橋哲順だ。2021年5月、新型コロナワクチンの供給が不足し、県民不安が増すなか、国が県で大規模接種を実施する場合にワクチンを供給すると発表があった。新潟県は実施を即断し、プロジェクトの中心人物として白羽の矢が立ったのが、市橋だった。市町村と協力しながら国とも交渉し、わずか4週間で1日5000人の接種が可能な大規模会場を立ち上げ、接種率を全国一に導いた。
実は市橋は成功請負人として、さまざまな特命を受けている。佐渡の病院機能再編をわずか3カ月でとりまとめたほか、研修医の育成プロジェクトの立ち上げにより研修医の確保に大きく貢献し、県内の研修医の数は過去最多となった。全国で最も医師が少ない新潟県の医療を縁の下から支えていた。
全国には約280万人の地方公務員がいる。ここに紹介した12人の受賞者は、「地域を支える多くの公務員」があなたの周りにも、確かに存在することを示唆している。
連載:公務員イノベーター列伝
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