信頼を得て、成果をあげる!
次に(2)の関係者から信頼を集め成果をあげてきた公務員を4人紹介したい。特に地方行政は多様なステークホルダーを抱え、固定化した人間関係によるトラブルも多い。民間には理解しづらい合意形成に至るまでの難しさがある。福井県越前市ダイバーシティ推進室の緒方祐は、2022年に福井県初となる「パートナーシップ宣誓制度」を導入にこぎつけた。
2014年に緒方が入庁した当時、LGBTという言葉を知らない職員がほとんどで、「福井は保守的だから理解してもらうのは難しい」と言われていた。しかし緒方は着実に歩を進める。NPO法人などで活動を進めるとともに、その取り組みをまとめたレポートが地方自治研究全国集会で優秀賞に選定されるなど、内外の評価を得て役所に変化をもたらした。
静岡県浜松市の野嶋京登は、全国の公民館の課題である「利用者の固定化や高齢化」に正面から向き合った。
野嶋は若者のボランティアを募集し、地域の声をもとにキャッチコピーを付けて、多世代が交流する公民館をスタートさせた。着想は那覇市の若狭公民館を視察して得たものだ。メディアには過去80回以上登場し、全国各地の講演会ではその実践事例やノウハウを惜しみなく共有している。
福井県高浜町の産業振興課に勤める中村広花も地域に根差して活動している。職人気質である漁師と率直に話し、信頼関係を結ぶことは簡単ではないが、中村は水産振興のために現場主義を徹底し、漁師たちと物おじせず積極的に距離を縮める。
漁師と一緒に船に乗り、網を引くこともあった。もちろん、公務員としてのマクロの視点も忘れない。漁師をサポートするために計画書の作成や補助事業の推進、そして、加工食品開発にも関わっている。
埼玉県久喜市スポーツ振興課の金澤剛史は、「予算ゼロ、前例無し」の状況にありながら、市民団体や高校等と連携して企業から協賛金を集めて、3人制バスケ「3×3高校生イベント」を成功に導いた。また、全国初の市民3000人超が参加するダンス動画も企画し、自治体動画としては異例の64万回再生を達成する。