ネイチャー・リサーチのオープンアクセスジャーナル、Communications Medicineに掲載されたのは、過去およそ20年間にニューヨーク州内の病院を受診したアルコール使用障害(67万1625件)と物質使用障害(72万1469件)の患者に関するデータと、受診日の気温と湿度について分析した結果。
研究チームは、記録があるなかで気温が最も低かった日と、第3四分位数にあたる気温の日のデータを比較した。その結果、気温が75パーセンタイルの値だった日は最低気温の日と比べ、アルコール使用障害に関連した入院患者の数が24.6%多くなっていたという。
また、オピオイド(鎮痛薬)、コカイン、大麻、鎮静剤などによる物質使用障害についても同様に比較したところ、入院患者数は最低気温の日より38.8%増えていた。目立ったのはコカインの乱用による入院で、37.6%多くなっていた。オピオイドは、摂取された種類によって、結果に違いがみられた。
研究チームによると、患者の年齢、性別、社会的脆弱性(外的要因によるストレスが人間の健康にもたらす問題が、地域社会に及ぼす潜在的な悪影響)を考慮しても、これらの結果には一貫性がみられた。また、ニューヨーク市内よりもそれ以外の地域の方が、変化の幅が大きくなっていたという。
気象情報を分析する欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)と米航空宇宙局(NASA)はいずれも、2023年夏の平均気温が過去最高を更新したことを発表している。そして、科学者たちの間では、温暖化を引き起こしているのは工業化であるということが、コンセンサスを得ている。
論文の著者らは、この研究結果は考慮すべきものであり、公衆衛生に関するキャンペーンにおいても、より明確に注意を促すべきだと指摘している。論文の最終著者であるコロンビア大学メールマン公衆衛生大学院のMarianthi-Anna Kioumourtzoglou准教授(環境健康科学)は、アルコールと物質の使用障害に関する介入においては「暑い時期のリスクに的を絞ったメッセージの発信を、最優先にする必要がある」と述べている。
ただ、著者らはこの研究結果について「気温と物質使用障害の関連性を過小評価している可能性がある」ことを認めている。最も深刻な症状が現れた場合には、受診する以前に死亡しているケースもあると考えられるためだ。
研究チームは今後、患者の過去の医療記録を使用し、これらの関連性についてより詳しく調査したい考えだという。また、気温の上昇とアルコール・物質の使用が持病の悪化を招く可能性についても、研究の対象になり得るとしている。
(forbes.com 原文)