アジア

2023.10.02 10:30

台湾初の自前潜水艦「海鯤」、日米の仲間と海中から中国ににらみ

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台湾は9月28日、初めて自主建造した潜水艦を進水させた。2014年に始めた重点的な取り組みの成果で、1隻目の建造費はおよそ500億台湾ドル(約2300億円)とされる。開発にあたっては外国から支援も受けたもようだ。ロイター通信は、台湾は同級の潜水艦を2027年までに少なくとも2隻配備する意向だと報じている。

新潜水艦は排水量2500〜3000トンと伝えられ、伝説の大魚にちなんで「海鯤」と名づけられた。

海鯤は台湾の新兵器としては群を抜いて重要なものだ。海鯤とその姉妹艦7隻は、F-16戦闘機やM1エイブラムス戦車、パトリオット地対空ミサイル以上に、中国の侵攻の制止に寄与する可能性があるからだ。米国、さらには日本の潜水艦とともに戦えば、それを撃退できる可能性もある。

中国は台湾に侵攻する際、まず何百発もの弾道ミサイルや巡航ミサイルを台湾の防空設備に向けて発射するとともに、台湾軍の補給線や通信網の寸断を図ると考えられる。ただそれに続いて、中国の海軍や民兵部隊が部隊や車両を台湾に上陸させる必要がある。そのためには、台湾海峡を150キロメートル渡って台湾の西海岸に到達しないといけない。東海岸に上陸する場合は、さらに長い距離、つまり数百キロメートル航行する必要がある。

だが海上では、侵攻する中国側部隊は相手側から非常に狙われやすい。さらに、たとえ一部の部隊を上陸させることに成功したとしても、それらの部隊もまた脆弱(ぜいじゃく)な状態になる。台湾で地上作戦を開始してから決定的に重要な最初の数週間、中国側は補給を艦船に頼ることになるからだ。

台湾側が十分な数の揚陸艦や補給用の艦船を沈めれば、上陸部隊はたちまち食料や燃料、弾薬が欠乏し、侵攻は沿岸部か少し内陸のあたりで頓挫する。台湾軍の水上艦や、ハープーン対艦ミサイルを搭載したF-16も、中国の艦隊にとってはある程度の脅威になるだろう。だが、それらよりもっと危険なのが、重量約1600キログラムのマーク(Mk)48魚雷を発射する潜水艦だ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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