世界が大きく変動している現状を踏まえれば、調達先を多様化することは肯定的に受け止められるかもしれない。しかし、地政学的ブロックによる分断を進めることは、長期的に見れば、貿易と世界的な経済発展に打撃を与えるのは必至だ。
「多国間貿易体制の終焉」で生じるコスト
WTOは、2023年2月に発表した「ウクライナ戦争の1年:世界貿易・開発への影響評価」と題する報告書で、ロシアによるウクライナ侵攻後に出現した多様化のパターンについて考察している。そして、貿易パターンは強靭性を発揮し、多くの場合は、地理的あるいは政治的に近い代替供給源によって不足分が補われたと述べていた。しかし、報告書はさらに、多国間貿易が終焉することには代償がともなうとも警告している。そのコストは、全世界の実質所得で8.7%、開発途上国では11.3%に相当するという。
また別の要素としては、海外直接投資が、地政学的ブロックと同じパターンを見せ始めているという現象がある。これもその影響は、開発途上国や新興国にもおよぶ。
WTOは、平均でわずか4経済圏から輸出されている製品をボトルネック製品と呼んでいる。こうしたボトルネック製品の世界的シェアは、2000年には14%だったが、2021年の少し前には、全貿易製品の20%に増加していた。その当時、こうしたボトルネック製品のうち、ドル取引で最大を占めていたのは、マイクロチップなどの電気機器だった。こうした製品の貿易量は増加を続けており、その大部分は中国からの輸出品だった。
(forbes.com 原文)