感染源になり得るものは?
英BBCなどの報道によると、ケララ州では先週末までにほかに3人がニパウイルスへの感染で入院した。同州でニパウイルス感染症のアウトブレイクが起きたのは2018年以降で4回目だという。ニパウイルスは、動物とヒトがともに感染する人獣共通感染症の原因となるウイルスだ。自然界で共生している宿主(しゅくしゅ)はオオコウモリ(フルーツコウモリ)で、ヒトのほか、ブタやヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌなど広範な宿主に伝染することが知られている。オオコウモリは感染しても目立った病気にならないとみられている。
さまざまな宿主にうつり得るという点が、公衆衛生の専門家による感染経路の追跡や感染拡大の抑制をいっそう難しくしている。過去のアウトブレイクでは、少なくともヒトとブタで重篤な病気を引き起こしていることが記録されている。
ヒトへは、感染した動物やその体液に直接触れたり、感染したコウモリの尿や唾液の付いた果物など、汚染された食品を食べたりすることで伝染する。
専門家はインドについて、人間の活動によってコウモリの生息地が破壊されていることなどから、各種ウイルスのスピルオーバー(自然宿主の動物種からほかの種への伝染)が起こるリスクがとくに高い国のひとつとみて警戒してきた。
これまでの発生例
WHOによると、ニパウイルス感染症のアウトブレイクは1999年にマレーシアの養豚業者の間で初めて確認され、シンガポールにも広がった。ヒトへの感染の大半は、病気のブタやその汚染された組織への直接接触で起きていた。アウトブレイクは2001年以降、主にバングラデシュとインドで報告されており、ほかにマレーシアやフィリピン、シンガポールでも発生している。WHOによれば感染者は1998〜2015年に計600人超報告されている。