宇宙

2023.09.16

火星の「鉱物の種類」、似た地球と比べて著しく少ない理由

NASAの火星探査機キュリオシティの自撮り写真。シャープ山の麓に近い「ナウクルフト高原」にある掘削サンプル採取地点「Okoruso」で撮影(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

地球には、6000種類以上のさまざまな鉱物が存在することが知られている一方、火星では50年以上におよぶ調査を経ても、161種類の鉱物しか見つかっていない。平均的な化学組成など、地球と多くの共通点を持つ惑星にしては、著しく低い数字だ。

最新の研究によると、この差が生じているのは、火星の鉱物が地球の鉱物に比べて、形成過程が少なかったことが原因だという。火星には、プレートテクトニクスと生命体という、鉱物の形成に寄与する2つの重要な要因がないからだ。

過去の研究では、地球の一次鉱物と二次鉱物の形成に関して57通りのメカニズムを特定しているのに対し、今回の最新研究で特定された火星の鉱物形成機構は20通りにすぎない。

両惑星の歴史の初期には、地球と火星の鉱物は同様の過程で形成されていた。例えば、両惑星の最初の鉱物は、冷えたマグマから直接結晶化したか、隕石(いんせき)衝突時に発生する高圧条件下で形成された可能性が高い。また、それぞれの惑星で最初の安定な地殻と海洋が形成されてからは、地殻変動と熱水活動が多くの新しい鉱物をもたらした可能性が高い。だがその後、火星と地球の鉱物がたどる道筋は枝分かれした。

地球とは異なり、火星は現在、地質学的に不活発な天体だ。火星内部のエネルギーは、原初の形成段階からの残熱と放射性元素の崩壊によって生成されたが、火星の直径が小さいため、遠い昔に大量の内部エネルギーが宇宙空間に流出してしまった。そして地球のプレートテクトニクスを駆動している、部分的に溶融した岩石の流れも、遠い昔に止まってしまったのだろう。

プレートテクトニクスがないため、火星には、カイヤナイト(藍晶石)やガーネット(柘榴石)などの多くの一般的な変成鉱物を形成するのに必要な圧力と温度の条件が存在しない。また、プレートテクトニクスは元素を絶え間なく再混合し、新たな化合物や鉱物を形成している。
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翻訳=河原稔

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