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2023.11.05 11:00

村道が廊下、村民がホテルキャスト。人口700人小菅村の「幸福な宿」とは

石井節子
村の暮らしに感銘を受け、一時は永住権の取得まで試みたという谷口さん。正式な取得の許可が降りるまでの年数がかかりすぎるため永住は諦めたものの、そこでの経験から「どうすれば自分たちが好きだと思う暮らしをお裾分けするような宿ができるだろう?」と考えるようになったとか。

日本に帰国したタイミングで「NIPPONIA 小菅 源流の村」のマネージャー募集の記事を見つけて“これだ!”と思った谷口さん。初めて訪れた小菅村は、オーストラリアで見たクリスタルウォーターズの村の姿と重なったという。

「小菅村は、町の規模もクリスタルウォーターズと似ていて、自然豊かで。ここなら自分たちが理想とする“暮らしをお裾分けする宿”ができそうだなと感じました」。

エコビレッジで過ごした経験が、現在の宿のマネジメントをする上での貴重な原体験になっているという。

読むふるさとチョイス

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「暮らしのお裾分け」をする宿で、本能が喜ぶ体験を


「NIPPONIA 小菅 源流の村」は、築150年超の地元名士の邸宅「細川邸」を改修した全4室の客室と22席のレストランを有する分散型のホテル。運営スタッフは全員が村人で、食材も小菅村の農家が栽培したものでほぼまかなう。スタッフは現地のガイドとなり、時には周辺の自然を一緒に散策し、自転車で村を巡り、出会った村人と立ち話をし、ゲストが村の日常とつながるサポートをする。

また、この地に伝わる食文化を継承し、現代風にアレンジした料理も魅力のひとつ。村の名産である川魚や、村人が丹精込めて育てた旬の野菜やわさびなど、村の味覚満載の創作和食を提供。ゲストはアクティビティや食を通じて、全身で土地の個性を感じることができる。

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「苦手だった川魚が美味しく感じられた」「田んぼの畦道を歩くのが懐かしかった」「自分で収穫した野菜を食べた」…。そんな何気ない体験に、人の心は喜びを感じるもの。幼い頃に田舎で体験したような肌感覚を呼び起こすことで、人間の本能が喜ぶ独自の体験価値を提供している。

足並みを揃えながら、村の幸福度を上げていく


地域内にホテルの客室を分散させ、地域全体で観光客をもてなす分散型ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」は、2019年のオープンから、段階的に施設の拡充を図ってきた。2020年には、小菅村の地形を生かし崖に張り出すように建つ2棟の古民家をリノベーションし、客室棟として新たに『崖の家』を開業。村で獲れた川魚や、採れたての野菜を使った食材のセット、自社ファームでの収穫体験から「つながる食卓」をテーマにした自炊スタイルのコテージでは、ともに過ごす人とここにしかない食の喜びを分かち合う、ローカルガストロノミーの場を創出している。

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文=中城明日香

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