「例えば、若い世代が集いやすい場であったり、子育て中の家族が利用しやすい場所であったり、おじいちゃんやおばあちゃんにとって居心地の良い場であったり。村内の人も村外の人も、気軽に楽しめる施設を作りたいと思っています」と谷口さん。
村は8つの集落で構成されているが、将来的には全集落に宿泊施設を作りたいと考えているという。
「小菅村の大きな魅力は、移住者や観光客など村外の人との間に壁がないことです。それでも新しい動きをするときには、少なからず抵抗はあるもの。僕らは、常に村人たちと歩幅を合わせることを意識して、村の最大の魅力である人と自然を大切にしていきたいですね」
宿の集客だけが目的ではない。その言葉には、村の住人たちを巻き込んでチームのように機能することで、村人も、ゲストも、それぞれが村で過ごす時間の幸福度を高めていこうという姿勢が垣間見える。
小菅村に学ぶ、100年先の持続可能な暮らし方
「村の30年後、40年後を想像したときに、もし何もしなければ人口は減っていく事実は避けられないかもしれません。林業や農業で村の暮らしを支えている世代の人たちが持っている、持続可能な営みの知恵が徐々に失われていくことへの懸念を、日々感じています。今までどおりの営みを継承することを目指しながらも、一方で外部のアイディアや新たな知識を借りて違った視点で継承する必要性も強く感じます」
村の暮らしは、知識だけでは推し測れない生きた知恵に満ちている。その文化を次世代へ繋ぐためにも、都市と村がお互いに無いものを補い合い、つながりを育む場を村人たちとともに紡ぐ谷口さんの一歩は、ここから100年先の暮らしを考える上で大きな示唆に富んでいると感じた。
NIPPONIA 小菅 源流の村