倍率2x以上の残余財産分配優先権をつけるなど、条件を複雑にしないほうが良いということです。
例えば、ここ数年で突出した成長を見せながらも過大評価されていたRampというスタートアップは、通常の条件をつけたダウンラウンドで3億ドル(約440億円)を調達したと最近発表しています。
投資家から聞いたところによると、起業家も投資家もこの厳しい現実に順応しつつあり、このような発表が今後数カ月で増えていくことが予想されています。
実際、直近でもInstacartとKlaviyoがIPOの申請を提出したとの報告があり、新たな水準のバリュエーションが受け入れられつつあることを示しています。
一方で、PMFを達成していないのに、何年も持ちこたえられるくらい過剰な額の資金を調達できた企業もあります。これらの企業は倒産のリスクこそありませんが、当面の成長の見込みもありません。シードステージの企業が山のように資金を蓄えている状況とも言えます。個人的には、多くのチームにとってこのような場合は投資家に資金を返して次に進んだほうが良いと考えています。起業家たちも次の新しい目標に専念できるようになり、誠実な選択を取ったことで周りからの評価も格段に上がるでしょう。
このようなややこしい状況に加え、上場市場と未上場市場の差異から生じる問題にもLP投資家は直面しています。
上場市場では時価で株価が急落する中、それに対する未上場市場はその性質上、再評価に時間がかかっているのです。
これがLP投資家にどう影響するかというと、未上場市場と比べて上場市場の価格調整が急速に進むことでポートフォリオにいわゆる「分母効果」が起こるため、各アセットクラスへの配分のバランスが崩れてしまいます。
そのため、数字だけ見ればベンチャーキャピタルに過剰に配分されているように見えますが、実際には保有するベンチャーキャピタルの持分の再評価が遅れているだけなのです。
さらに状況を複雑にしているのが、上に挙げたような様々なケースの企業に対する評価額を決めるのが困難である点です。
例えば、5年は持ちこたえられる資金はあっても、PMFが微妙な企業はどのように評価するべきでしょうか。明確な答えが出せない、全体的に非常に複雑な状況なのです。同じ「ホット」なスタートアップを組み入れている複数のファンドに投資しているLP投資家であれば、VCによって評価額が異なる点についても悩まされるかもしれません。どこの評価額が正しいのかは、結局のところそのスタートアップがイグジットするまでは確実に言えないのが現状です。