欧州

2023.09.05

肥満治療薬で株価急騰、時価総額がLVMH超え デンマーク製薬大手

Photo by Steffen Trumpf/picture alliance via Getty Images

デンマークの製薬大手ノボノルディスクは9月4日、英国で肥満治療薬「ウゴービ」を発売したと発表した。この薬は、米国では需要に供給が追い付かない状況になっており、英国では流通を「管理・制限」した上で販売される。

ノボ社は、一般名でセマグルチドと呼ばれるウゴービが「管理された限定的な発売」によって英国で入手可能になると発表した。

糖尿病治療薬「オゼンピック」としても販売されているセマグルチドはすでに供給不足に陥っている。販売されるウゴービの一部は、英国の国民保健サービス(NHS)を通じて治療を受ける患者のみに割り当てられる。

英国の医薬品監視機関である国立医療技術評価機構(NICE)の勧告によれば、対象となる患者は肥満度が30以上で、体重に関連した健康問題を抱えている人に限定される。NICEのガイダンスによると、この薬剤は最長2年間、NHSで提供される「体重管理専門サービス」の中で使用されるべきであり「単独で使用した場合の有効性のエビデンスはない」という。

ノボ社は、肥満症治療へのアクセスを向上させるという英国政府の姿勢を共有し「最もニーズの高い患者」を優先的に治療するよう、医療従事者と協力していくとしている。

ノボ社の株価は1日の欧州株式市場で史上最高値を更新し、フランスの高級品大手LVMHを抜いてヨーロッパで最も価値のある上場企業となった。同社の株価の急騰は、糖尿病治療薬と肥満治療薬の売上高が急上昇していることに後押しされている。

ロイターによると、ノボ社の1日の取引終了時の時価総額は未上場株を含めておよそ4247億ドルとなった。一方、LVMHの時価総額は4201億ドルだった。

減量は常に大きなビジネスであり、この分野の医薬品は、製薬業界の歴史の中で最も利益率が高いものの1つになりつつある。ウゴービやオゼンピックは、話題性のある生活習慣病治療薬として早くから評判を呼び、イーロン・マスクなどの著名人も「体重を落とすのに役立った」と述べている。

肥満は高血圧や糖尿病、がんなどの他の多くの疾患と関連しており、減量は単に体重を減らすだけでなく、医療システムや社会へに副次的な利益をもたらすことになる。肥満治療薬としては、新たな薬剤「マンジャロ(Mounjaro)」が、間もなくノボ社の孤高の地位を脅かすと考えられている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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