観測は欧州南天文台(ESO)の巨大望遠鏡VLTを用いて行われた。海王星の暗斑が地上の望遠鏡を使って観測されたのは初めてで、この発見に天文学者らは当惑している。
海王星のメタンを含む大気がどのように機能しているかを、遠方から解き明かそうとしている科学者らは、謎の解明に一歩前進した。34年前、米航空宇宙局(NASA)の探査機ボイジャー2号から地球に送信された観測史上初の海王星のクローズアップ画像には、大気の上層にある(メタンの氷でできた)明るく白い巻雲(筋状の雲)だけでなく、暗斑も写っていた。この暗斑は数年後に消失。2018年にはハッブル宇宙望遠鏡の観測で、海王星の北半球にある暗斑が確認された。
神出鬼没な暗斑
今回の発見に関する論文は、学術誌ネイチャー・アストロノミーに24日付けで掲載された。筆頭執筆者で、英オックスフォード大学教授のパトリック・アーウィンは「暗斑の最初の発見以来、現れてはすぐに消えていく、神出鬼没なこの暗色の特徴は一体何なのだろうと、私はいつも疑問に思っていた」と話す。「暗斑を地上から初めて検出できたことに、本当に興奮している」アーウィンらのチームは、暗斑が発生する原因について、海王星の大気中で氷と靄(もや)が混ざり合う中、表面下の層で粒子状物質が黒化することにあると考えている。
史上初の「反射スペクトル」
この結論を導き出せたのは、海王星の暗斑から初めて、VLTを用いて3次元の反射スペクトルを得られたからだ。暗斑から反射された太陽光を構成色に分解することで、海王星の大気中のどこに暗斑が位置しているかや、どのような化学物質で構成されているかを、より容易に突き止めることができた。論文の共同執筆者で、米カリフォルニア大学バークレー校の研究者のマイケル・ウォンは「今回の観測の過程で、深層にある珍しい明るい雲のタイプを発見した。このような雲は、宇宙からですら、これまでに一度も特定されたことがなかった」と話す。明るい雲は、暗斑のすぐ近くに現れていた。
今回の発見が発表される数日前には、海王星の雲が四季(それぞれの季節の長さは41年間)ではなく、太陽の11年の活動周期に関連していることが、ハッブル宇宙望遠鏡の観測で明らかになっていた。