水野:たしかに。急速に成長しましたよね。急成長のきっかけはあったのでしょうか。
箭内:ネガティブですけど、大きなきっかけとなったのは、2018年に仮想通貨ネム(NEM)が取引所から流出した「コインチェック事件」でしょうか。事件後は消費者保護、国内の法整備を進めていく流れが顕著になったと感じています。「よく分からない新しい金融商品」という立ち位置から、「ルール化された金融商品」になったイメージです。
水野:法整備されることで新規参入しやすくなったというのはありますね。その流れは今年、特に岸田政権になってから感じることですか?
箭内:特定の政権というより社会の流れかなと。特に日本だと、今年4月に自民党からWeb3のホワイトペーパーが発行されましたし、各カンファレンスでの首相や大臣、経産省の事務方のプレゼンや登壇といった政府のアナウンスがあったことで企業も入りやすくなったと思います。クリプトと関係のなかった人たちも「Web3盛り上がっているぞ! カンファレンスも開催しよう」と各地でブロックチェーンや暗号資産をキーワードとしたイベントが増えています。
実はそれらのイベントのほとんどは、新規参入の団体・企業が主催しているんです。産業が成長しているって、こういうことだと思います。ただ、どのような領域でも浮き沈みはあるので、Japan Blockchain Weekという団体を新たに作って盛り上げていこうと思ったわけです。
水野:正式にスタートしたのは、今年でしたっけ。
箭内:はい。「IVS Crypto」の運営責任者であるWhiplus Wangさんや「Oasys ネットワーク」の松原亮さんにアドバイザリーボードに入っていただくなど、国内外のキーパーソンが参加しやすい環境をつくるために、法人を設立しました。
水野:Japan Blockchain Weekは、各地のイベントにとって、どのような立ち位置ですか?
箭内:「大きな傘」というイメージです。傘下でたくさんのイベント主催者と連携し、東京だけでなく全国各地で同じ時期に行えば海外からの参加者も増え、ノウハウもたまります。
水野:それを踏まえて、カンファレンスなどのイベントは今年来年でどのように変わっていくと思いますか。
箭内:やはりコアな「クリプト民」に向けたイベントより、Web3分野のBtoB向けのソリューション系イベントが多くなるのではないかと思います。例えば、ブロックチェーンEXPOなどです。
他方で、この約10年で変遷してきたWeb3の現状をふまえ、今後も成長し続けるために、クリプトの文化的背景でもある「個」の発想や「サイファーパンク」が形作った世界観は踏襲していきたいですね。