例えば、初期の頃の有名人でいうと、ロジャー・バー氏という「ビットコイン・ジーザス」と呼ばれるエンジェル投資家が日本在住だったり、世界最大の暗号資産取引所「マウントゴックス」も東京に拠点がありますしね。
水野:Web3の黎明期は「個」の存在が支えていましたね。
箭内:歴史的に、「サトシ・ナカモト」というアノニマスな存在が論文を発表して以来、「個」が集まってビットコインへの潮流を作りました。2013年にヴィタリック・ブテリン氏がイーサリアムを定義していくなど「個」の集合が技術を牽引していたという要素は大きいですよね。
その流れがカンファレンスやミートアップ然り、現在のWeb3界隈の基盤を作っていった感じです。
箭内実氏
水野:個から発祥して産業化していくというのはWeb3の概念と合致していますね。
箭内:そうですね。例えばモバイルでも個が活躍する時期もあったと思うんです。初期の頃のモバイルデベロッパーなどですね。ただそれはあくまでAppleやGoogleという巨人がいて、彼らのプラットフォームやエコシステムの上に個がのっかっていくという状態でした。
暗号資産やクリプトの世界では、個が集まってオープンソースの概念をもとにして、色々な人が互いにサポートし合うという「OSS思考(オープンソースソフトウェア思考)」が未だに残っていると思います。そのため、事業上何がしかの制限を設けると、それ自体が批判を浴びるという状況も生まれたりしています。ビジネスとしてはごく普通ですけど、文化的に「違う」という感じです。
水野:ここまでのお話ですと、ゲームと産業などよりも、もともとの成り立ちがオープンソースコミュニティなどの方が近いですよね。
箭内:そうですね。あとは今はほぼ使われない言葉ですが「サイファーパンク」という世界観もあります。「サイファー」は暗号を意味しますが、要はアノニマスな状態で、政府に管理されない世界観をつくろうという思想体系は未だに残っていて、文化的な背景として根付いているのだと思います。
法整備とともに、Web3の新規参入が加速
水野:そうして組成されたオープンソースコミュニティ的テックカルチャーの土台に、金融的な「暗号資産」が現れ、そこにマーケターが集まってきたわけですね。ビジネスとしてWeb3領域に新規参入してくる人は、どのような経歴の人が多い印象ですか。