ファッション

2023.08.26 11:00

容姿で時代に抵抗する、シャラ ラジマの純な素顔

マイノリティを無視せず、「地」で楽しむ

シャラ ラジマがボーダレスという言葉を使う時、イメージするのは画一化した世界ではなく、「文化がミックスし、個性がコラージュしているような世界」だという。その実現のためにはまず、女性とはなにか、外国人とはなにか、作りあげられた既存のイメージを解体し、再構築していく必要がある。ダイバーシティやインクルージョンというキーワードとともにこのプロセスは動きだしているが、すぐに結果が見られるものではない。

「私が生きているうちに解決するようなものではなく、時間がかかる問題ではあるけれど、マイノリティを無視する社会に迎合したくはありません。私の存在や表現が認知されることで、脱構築が少しでも早く進めばいいなと。ただ、そのために自分の考えを押し付けたりするつもりもありません。自らの身体を使った、生きるインスタレーションとして、社会と対話をしながら表現していきたい」

公の舞台で活動し、自分の地を出して生きると、誹謗中傷を浴びることもある。それでも物怖じしないのは、「自らの眼で探した、美しいものとの出会い」を信じているからだ。

「SNSを眺めるより、フィールドワークで自分の知らない世界を生きる人から刺激をもらうことが好き。素晴らしい映画や本に出会い、それらから吸収し、血肉にしていきたい。人に深入りすることで傷つくこともあるけれど、自分が嫌な思いをすれば相手にそれをしないようになる。傷つくことは、誰かを大切にすることにつながります。その意味で、私は自分がマイノリティでよかったと思っています」

そう語る彼女への最後の質問として、「カラーコンタクトを外し、素顔に戻った自分を見てどう思うのか」とたずねると、「私、意外にモテ系のかわいいじゃんって思います(笑)」と照れ笑いをした。

マイノリティが記号のように語られないように、個性がマーケティングの手段として消耗されないように。人の痛みを想像し、自ら行動する人として、シャラ ラジマはこれからも自分の言葉で発信していく。


シャラ ラジマ◎バングラデシュにルーツを持ち、10歳から東京都北区で育つ。あえて髪を金髪に染め、青いカラーコンタクトをし、容姿からは人種が容易に判断できないようにすることで「人種のボーダーレス」を表現している。雑誌、テレビ、ラジオ等で、自らの価値観や美意識について発信。

文=鶴岡優子 編集=鈴木奈央

連載

30 UNDER 30 2023

ForbesBrandVoice

人気記事