同じことが「ガチ中華」にも言える。1980年代の中国の改革開放政策がプッシュ要因となり、中国人の大量出国が始まった。特に1980年代後半からは日本で働きながら日本語学校に通う留学生が増えていく。1990年代になると、彼らは主に東京の池袋で在日中国人向けのビジネスを始めた。それが現在のガチ中華料理店誕生のひとつの起点となっている。
居酒屋メニューからの影響も
始まりが留学生であったということのほかに、店で供されるメニューやサービスにも共通点を見つけることができる。それは日本の居酒屋からの影響だ。「ガチネパ料理の店では、学生時代なども含めて開業までに日本の居酒屋での勤務経験のあるネパール人オーナーが多く、その居酒屋メニューからさまざまなアイデアを引用している」(小林さん)
たとえば、刺身の盛り合わせに見られるような料理の概念は現地のネパール料理にはないが、日本のガチネパの店では種類の違う「モモ」(ネパール風餃子)を盛り合わせたメニューがある。
これはガチ中華にも言えることで、在学中や卒業後、居酒屋チェーンでアルバイトしたり、働いたりした経験をもとに、大皿を並べてみんなで食べるという中国の一般的な食のスタイルではなく、日本の居酒屋風の小皿料理を出して、お酒のメニューを増やしている店がある。たいてい30代から40代の中国人オーナーの店だ。
それと、ガチ中華で言えば「ギラギラ系」や「レトロチャイナ」 といった現地性を強く感じさせる店の内外装の面白さは、ガチネパの料理店でも見られ、これもメニューと同様に日本独自の発展を見せている。
たとえば、大塚にあるガチネパの店「カスタマンダップ」(豊島区北大塚2-7-9 第33東京ビル5F)の内装は、日本人にとって非日常感を味わえる空間だ。
前出の小林さんによると「同じネパール人でも室内装飾へのこだわりは民族差があり、伝統的に木工芸に秀でたネワール族が内外装に強いこだわりを見せます。『カスタマンダップ』のオーナーはネワール族で、その民族性を強調した内装は異国にいるがゆえに、より故国のイメージを際立たせようとしているのかもしれません」ということだ。