令状によると、捜査官は容疑者のフェイスブックのプロフィールを確認し、顔認識の一致をさらに裏付ける写真を確認した。その後、容疑者は逮捕され、児童の性的搾取の疑いで訴追された。弁護人はフォーブスに対し、容疑者はまだ起訴されていないため、罪状認否を行っていないと説明した。
この事件は、当局が顔認識ツールを使って、児童搾取の手がかりを探していることを知る貴重な機会となった。しかし、HSIのジム・コール元捜査官によると、HSIはこの種のテクノロジーを、長年にわたり未解決となっている事件の解明を目指して3週間にわたり行われた異例の作戦にも使用し、何百人にも及ぶ児童と虐待者の身元を特定した。
20年以上にわたり未成年が被害者の犯罪捜査に取り組んできたコールは、先日同局を退職する前、このイニシアチブを推進していた。コールはフォーブスの取材に対し、これまで報じられていなかったこの作戦は、HSIのサイバー犯罪センターで7月中旬に始まり、8月4日に終了したと語った。
物議を醸す「クリアビューAI」
コールはHSIが使用したツールの名前を明かさなかったが、ある関係筋はフォーブスに対し、そのうちの1つが米企業クリアビューAIが開発し、物議を醸してきた顔認識テクノロジーであることを明らかにした。ニューヨークに本社を置くクリアビューAIは、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSから、利用者の同意を得ずに収集した300億枚以上の画像のデータベースを構築している。HSIは同社と最大200万ドル(約4億8000万円)規模の契約を複数締結。同社も以前、自社の技術が児童搾取の捜査に使われたと述べていた。コールによれば、搾取を含む画像は、顔だけがトリミングされ、クリアビューのサーバーにアップロードされる。それぞれの画像にはシグネチャー(署名情報)が付けられ、同ツールの使用状況を監査するHSI職員が検索できるようになっている。コールによると、すべてのクエリ(データベースへの問い合わせ)はログに記録され、適切な使用がなされているかを監査員が監視。すべてのデータは「暗号化された壁の向こうにある」ため、クリアビューの従業員はアクセスできないという。
HSIのサイバー犯罪ラボには、これほどの規模の資料をデータベース化する際に必要な保全措置を講じるためのリソースがなかったため、こうした捜査は以前では不可能だったとコールは説明した。