気候・環境

2023.08.01 09:00

米国で白熱電球禁止 8月1日から新規制施行

安井克至

shutterstock.com

米国のバイデン政権は8月1日から、エネルギー効率の高い電球の普及のため、白熱電球の販売を禁止する。

米国では長年にわたり、民主・共和両党がエネルギー効率の低い白熱電球の使用の段階的削減を目指してきたが、この取り組みはドナルド・トランプ前大統領によって阻止されていた。

米エネルギー省は昨年、電球の発光効率の下限を45lm/W(消費電力1ワット当たり45ルーメンの明るさ)とする新規則を承認。これにより、発光効率が12~18lm/Wの白熱電球は8月1日から販売が禁止される。ただし、家庭ですでに使われている電球については、引き続き使用が許可される。

同省は、エネルギー効率が高いLEDなどの電球は白熱電球より消費電力が75%以上低く、寿命が最大25倍だと指摘。新規則の導入によって「消費者の光熱費節約を支援する」と説明。米国では2020年時点で推定30%の世帯が白熱電球やハロゲン電球を使用しており、高効率照明による年間節約額は30億ドル(約4300億円)に上ると推計されるという。

発光効率の低い電球を減らしていく取り組みは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が開始。2007年の新法では、家庭用電球の効率を約25%向上させるべきだとしたが、白熱電球の禁止には踏み込まなかった。

バラク・オバマ元大統領は2017年、新たに2件の規制を追加し、白熱電球の他、シャンデリアに使われるキャンドル型の電球などを段階的に禁止する方針を示した。

だがその後、政権を握ったトランプは、高効率電球の普及を含む環境政策に反対。エネルギー省は2019年、前政権が導入した規制を撤回した。トランプは、米国民が「使用を強いられている」高効率電球の光のせいで自分の肌が「オレンジに見える」との不満も示していた。

共和党からは、白熱電球の禁止を批判する声も上がっている。同党のパット・ファロン下院議員(テキサス州選出)はポリティコに対し「バイデン政権による規制の波が米国の家族を圧迫しているもう1つの例にすぎない」と指摘。スコット・ペリー下院議員(ペンシルベニア州選出)は最近、白熱電球の禁止はバイデンの家電製品に対する「規制攻撃」の一環だと断じた。

白熱電球については、気候変動の一因となっているとの懸念もある。エネルギー省は、世界の温室効果ガス排出量の約5%が照明によるものだと推定。白熱電球など低効率の照明は発熱量が多いことからも、エネルギー使用量の増加につながるとされる。

同省は、新規制により今後30年間で炭素排出量を2億2200万トン減らせるとみている。これは、2800万世帯分の年間排出量に相当するという。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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