欧州

2023.08.01 13:00

ウクライナ軍、対空ミサイルを対地に改造 ロシア都市攻撃に使う

ポーランド空軍博物館に展示されている防空システム「S-200ベガ」(Below the Sky/shutterstock)

ポーランド空軍博物館に展示されている防空システム「S-200ベガ」(Below the Sky/shutterstock)

ウクライナ政府がより射程の長い兵器の供与を支援国にせがむ一方で、同国空軍は自力でなんとかする方法を見つけている。

ウクライナ空軍は6月以前のどこかの段階で、古い地対空ミサイルシステム「S-200」を保管庫から引っ張り出した。そして、使用されているV-860ミサイルやV-880ミサイルの指令誘導装置をGPSシーカーで置き換え、地対地ミサイルに改造したとみられる。その後、この改造ミサイルを使ってロシア国内の目標を攻撃し始めた。

7月28日には、黒海に面するロシア南部の都市タガンログにS-200改造ミサイルが撃ち込まれた。タガンログはウクライナとの国境から約30キロメートル、前線からは160キロメートルほどの距離だ。車載カメラの映像は、8トンのミサイルが市の一区画に着弾する瞬間を捉えている。飲食店と集合住宅が被害を受け、十数人が負傷したと伝えられる。

S-200改造ミサイルによる攻撃は、7月9日に最初に確認された。この時はロシア西部ブリャンスク州の工業用地に撃ち込まれ、損害をもたらした。場所はウクライナとの国境から180キロメートルほどの距離だった。

ウクライナに対して西側諸国から遠距離打撃兵器が供与される場合、条件がつけられがちだ。最も多いのは、ロシア国内の目標に使用してはならないというものだ。

英国が今春、空中発射の長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」の供与を決めるにあたっても、ベン・ウォレス英国防相はウクライナ側に対して、ロシアに占領されている地域の目標に使用を限定するという確約を求めた。ウクライナは5月にストームシャドーを初めて使用して以来、この約束を守っているようである。

だが、自国製の遠距離打撃兵器については、このような制約はない。ロシアによるウクライナの都市に対するミサイル攻撃は毎日のように起きている。ウクライナ製の長距離兵器が増えるにつれて、同国によるロシアの都市に対する報復攻撃も増えるだろう。それにはミサイルだけでなく、無人機(ドローン)も使われるに違いない。

ウクライナには1960年代に開発されたV-860ミサイルやV-880ミサイルが相当量あり、これらは再利用を待っていたとも言える。S-200はかさばり、地対空兵器としては時代遅れだ。ウクライナは現在の戦争が始まる前、防空システムをより新しく軽量のS-300に入れ替えていた。そしていまは、さらに軽量の西側製防空システムへの転換を進めている。

だが、全長9メートル超のV-860ミサイルやV-880ミサイルを対地攻撃兵器に転用した場合、その図体の大きさが逆にメリットになる。

約220キログラムの弾頭は、ミサイルのもたらす破壊力のごく一部にすぎない。着弾の瞬間にタンクに燃料が残っていれば、弾頭の爆発効果に焼夷効果が加わることになる。タガンログ攻撃の映像では、これにより生じた火球や衝撃波が確認できる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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