「ミニマムモビリティ」と名付けられ、「80年代のポラロイドカメラ」をモチーフにしたレトロなデザインのこのEVは、2025年の量産化に向けて準備中だが、すでに5800件の申し込みがある。価格は100万円以下を予定。2033年には70万台の普及を目指している。
1人乗りにしたのは、車両価格、維持管理費、電気代を安く抑えられることもあるが、将来計画している自動運転による移動サービスに適しているという理由もある。大型車による移動サービスでは、車両価格や維持管理費が高くなり、人口減少で乗客が減れば輸送効率が下がって経費がかさみ、いくつもの迂回ルートで運行するために遠回りを強いられて利便性が悪いなどの欠点がある。1人乗りなら、行きたいところへ直接行ける自由がある。小さいので低速で走ってもほかの交通の邪魔にならない。おまけに、座席がセンターポジションなので走る楽しさが味わえるということだ。
KGモーターズが目指すMaaS(サービスとしてのモビリティー)とは、個人のニーズに合わせて最適な移動手段を提案し、予約や決済なども一括して行える総合的なサービスのことで、移動の利便性向上や地域の課題解決に資するとして国土交通省も推進している考え方だ。KGモーターズは、ミニマムモビリティの利点を活かしたMaaSを段階的に提供していく構想を立てている。
まずは「先行展開」として、2027年以降、自動運転レベル4(特定条件での完全自動運転)を実現させ、乗り捨て可能な「ワンウェイ型シェアリングサービス」を目指す。利用者が目的地まで車を運転して行ったあとは、車が勝手にポートに戻るという仕組みだ。
2030年以降に想定しているのは、先行展開で知見を積み重ね、レベル5の完全自動運転化を実現した後の「ロボタクシー」だ。街中を完全自動運転のミニマムモビリティ・タクシーが常に走っている状態を目指す。
また同社は、車両を含むMaaS関連のシステム一式をパッケージにして、企業や自治体に提供するビジネスモデルを打ち立てている。KGモーターズが直接運用するのではなく、たとえばミニマムモビリティを購入した人が、それを使った移動ビジネスを簡単に展開できるプラットフォームを提供するという形だ。
車を所有しない、超小型車EV、と聞くとカーマニアには寂しい感じもするが、経済停滞と人口減少により右肩上がりの時代は終わり、価値観の転換が求められる。CEOの楠一成氏は、ミニマムで楽しい移動手段を社会実装することで、後ろ向きな気分にならず、ワクワクが感じられる社会を作りたいと語っている。
プレスリリース