健康

2023.07.25 09:00

がんサバイバーの「生きる」を最高の1枚に。ラベンダーリングが広がる理由

出来上がった「ラベンダーリング」のポスターを見て喜ぶ稲垣さん親子(撮影=グリフィス太田朗子)


2019年12月の1週間、1階のアトリウムに、約200枚のポスターが展示され、荒井さんは毎日、会場に詰めた。新聞連載が話題を呼び、本にもなった時期で、荒井さんと会えて涙ぐむ来訪者もいた。
2019年に開かれた「ラベンダーリング」ポスター展で集合写真

2019年に開かれた「ラベンダーリング」ポスター展で集合写真


「今度は、撮影も」と意気込んでいた荒井さんだが、その後のコロナ禍で啓発活動は停滞し、体調も下降線をたどった。旅立ったのは、22年1月。47歳の若さだった。
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愛知県がんセンターで初めての「メイクアップ&フォトズ」が行なわれたのは、その半年後。コロナ禍の厳しい制限付きながら、荒井さんの遺志を継いで活動を広げたいと、関係者の思いは一致していた。

2回目の今回は、東海地方の主要病院にも公募のポスターを掲示してもらい、申し込み者は63人に達した。患者さんたちに認知される活動になったといえそうだ。落選した人たちも「また来年」と目標にしていると聞く。

撮影したポスターの展示は、9月17、18日に名古屋市東区のイオンモールナゴヤドーム前店で、がん啓発イベントの一環として行われる。主催する愛知県がんセンターの担当者は「闘病の川柳も募集して掲示したい」と意欲を燃やしている。

遺志を継ぎ、広がる笑顔と敬意

ラベンダーリングは、昨年、中国、シンガポール、台湾、タイでも開催され、国内でも今年新たに国立病院機構四国がんセンター(愛媛県松山市)でも初開催されるなど、取り組みを広げている。
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創設者の一人・御園生泰明さんは21年4月に亡くなったが、手弁当で活動を続けるスタッフの思い、各地の協力者とのネットワークは、さらに強固になっている。

「がんは死の病じゃない」「がん患者は何もできなくなった人じゃない」とどれだけ言葉で説明しても、長年の“常識”を覆すのはなかなか難しい。むしろ、「生きる姿」を切り取った一枚の写真が心を揺さぶったり、闘病中の患者を勇気づけたりすることがある。

そこに着目した月村さんらの戦略は、がん患者の社会参加が盛んになった時代の流れを受け、大きな花を咲かせつつある。活動のエネルギーを持続させるのは、ポスターを通じて笑顔の輪が広がり、人々の意識が変わっていくという実感。そして、亡くなった御園生さんへの敬意だ。その点は、愛知も一致している。
ポスターにする「最高の1枚」をフォトグラファー金澤さん(左)と相談する参加者

ポスターにする「最高の1枚」をフォトグラファー金澤さん(左)と相談する参加者(撮影=グリフィス太田朗子)

文=安藤明夫

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