一方、ロシア外務省は12日の声明で「NATOは東西冷戦の枠組みに戻った」と非難した。中国も「アジア太平洋版のNATOはいらない」(中国外務省の汪文斌副報道局長)として、日本や欧米の動きを強く牽制した。
果たして欧米社会と中国・ロシアを中心とした権威主義陣営の対立はどちらに軍配が上がるのか。国連加盟国は193カ国、NATO加盟国は現在、31カ国だ。ロシアが主導する軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)は6カ国。ロシアや中国が主導する地域協力組織「上海協力機構(SCO)」は最近、イランが加入して9カ国になった。国内総生産(GDP)でみたG7の世界に占める経済規模は、1970年代の約6割から現在は4割ほどまでに縮小している。対して、SCOは同25%ほどを占めるとされる。
どちらの勢力も第3世界を巻き込まないと勝利を確実にはできない。5月に広島で開かれた主要7カ国首脳会議(広島G7)のコミュニケは、G7恒例の「民主主義」という言葉をなるべく使わないようにした半面、南半球を中心とした新興国の勢力「グローバルサウス」との協力を強調した。
では、グローバルサウスは欧米などの自由主義陣営と、中ロを中心とした権威主義陣営の対立をどのように眺めているのだろうか。
6月、シンガポールで「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」が開かれた。インドネシアのプラボウォ国防相が3日、演説したときのことだった。プラボウォ氏は、ロシアとウクライナの早期停戦や非武装地帯の設置などを求めた。欧米の参加者を中心に、この提案に懐疑的な質問が相次いだ。参加者によれば、そのやり取りの際、「東南アジア諸国が危機に陥ったとき、欧米は何をしてくれたというのか」という発言が飛び出した。この参加者の周囲にいた東南アジア諸国の参加者は「机の下」で静かに拍手していたという。欧米の支援もあり、正面から欧米の意向に逆らえないものの、長年の植民地支配や人権を振りかざす欧米諸国に対する東南アジアの根強い反感が、その場面に凝縮されていた。