欧州

2023.07.04

ウクライナ軍、地雷原で損傷した西側供与の戦闘車両25両の回収開始

スイス軍のベルゲパンツァー3ビュッフェル(VBS/DDPS via Wikimedia)

ウクライナ軍は、6月8日に南部ザポリージャ州マラトクマチカ南方の地雷原を突破しようとして失った西側供与の戦車、戦闘車両、工作車両など少なくとも25両の回収作業に着手した。ウクライナの工兵が7月1日にソーシャルメディアに公開した短い動画からわかる回収作業状況は、2つの事実を物語っている。

1つは、ウクライナ軍がマラトクマチカからロボティネを経てトクマクへ向かう軸線に沿って十分に前進し、回収作業班が安全に活動できるようになったということ。

もう1つは、ウクライナ軍が6月8日に損失したM2歩兵戦闘車(IFV)17両、レオパルト2A6戦車4両、レオパルト2R工兵車3両、ヴィーゼント工兵車1両などのうち、いくつかは修復可能だと考えていることだ。

IFV、戦車、工兵車の一部を修復できれば、ウクライナ軍第33独立機械化旅団と第47独立機械化旅団が南部反攻作戦の4日目にマラトクマチカ南方で被った損害の一部は軽減できるだろう。


公開された動画は、マラトクマチカの地雷原から米国製のM2をドイツ製のベルゲパンツァー装甲回収車(戦車回収車)で牽引しようと準備しているウクライナ兵だと説明されている。M2は軽度の損傷で済んでいるように見える。

第47旅団は6月8日、保有する99両のM2のうち少なくとも17両と、レオパルト2R地雷除去戦闘車6両のうち3両を遺棄した。レオパルト2Rと、第33旅団所属とみられるヴィーゼント地雷除去車は、M2と第33旅団のレオパルト2A6戦車14両のために地雷原を切り開こうとしていたが、その際に何らかの問題が発生した。

地雷除去戦闘車が数個の地雷を除去し損ねて爆発が起き、先頭車両の多くが大破。後続が玉突き状態になったところで、戦闘部隊がロシア軍の砲兵やヘリコプターの格好の標的になった可能性がある。

いずれにせよ、第33旅団と第47旅団の戦闘部隊は負傷者と死者を出して退却。両旅団は、それぞれ保有する最高の車両の約5分の1を失ったものの戦闘を継続し、ザポリージャ州とドネツク州の複数方面でウクライナ軍が反攻を強める中、ついにマラトクマチカの地雷原を突破ないし回避することに成功した。

レオパルト2A6の長射程砲と高性能光学機器、同じく強力なM2の光学機器とTOW対戦車ミサイルが有利となる夜間に長距離から攻撃することで、ウクライナ軍は数キロ南下してロボティネ郊外に到達。2日も同地で戦闘が続いた。

現在、マラトクマチカの地雷原から南方の前線までは十分な距離が開いており、ウクライナ軍が遺棄したM2、レオパルト2A6、レオパルト2Rなどの動かない車両を、回収班が牽引して運び出すことが可能になった。1日公開の動画では、T72とおぼしき損傷した戦車も確認できる。
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編集=荻原藤緒

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