NASAの科学者、マシュー・ロデルとバイリン・リーが今年発表した研究結果によると、2002年から2021年の20年間に起きた洪水や干ばつなどの極端な水循環の現象は、地球の平均気温と相関関係があることがわかった。この20年間で505件の湿潤事象と510件の乾燥事象が発生し、平均5~6カ月間継続しており、その頻度はこの期間で最も暖かかった7年間である2015~2021年の間に悪化していた。
一部地域では、他地域よりも洪水被害が大きかった。アフリカ、オーストラリア、ユーラシア、南米の各大陸では乾燥事象が多かったが、北米は湿潤事象の方が多かった唯一の大陸だった。
NASAゴダード宇宙飛行センターの地球科学部門で副部長を務めるロデルによると、気温が上昇すると海と陸上からの水分蒸発が増える。これが干ばつを引き起こすとともに、水分が大気中から放出されると大雨となり、大洪水を引き起こす。
世界中で気温が上昇しているため、今後、洪水の規模は増していくと予想されている。ロデルはフォーブスに「これまで1000年に1度だった雨が、100年に1度、あるいはそれ以上の頻度になるかもしれません」と語った。
米国立環境情報センターによると、2023年はエルニーニョ現象の発生に伴い、世界の年間平均気温が観測史上トップ10に入ることはほぼ確実という。
米国では今月、複数の州が大洪水に見舞われている。ペンシルベニア州フィラデルフィア北方で発生した豪雨では5人が死亡、バーモント州で発生した記録的な洪水では1人が死亡、ニューヨーク州ハドソンバレーでは豪雨と洪水で1人が死亡した。
米国以外では、インドが大規模な洪水と豪雨に見舞われている。韓国では9日に始まった大雨が17日になっても降り続き、40人近くが死亡したと報じられている。CNNによると、日本は10日に記録的な豪雨に見舞われ、洪水や土砂崩れによって少なくとも6人が死亡した。
米北東部が大洪水に見舞われた一方で、米南部は猛暑による死者が出ている。アリゾナ州フェニックスなどでは1週間以上にわたり37度を超える猛暑が続いており、さらに多くの都市が最高気温の記録を更新する見通しだ。
世界気象機関(WMO)によると、世界の気温は今後5年間で、産業革命前の1850〜1900年の平均より1.1〜1.8度上昇すると予想されている。洪水や干ばつに加え、気候変動は熱波やハリケーン、森林火災の悪化にもつながっている。米国では昨年、10億ドル(約1400億円)以上の損害をもたらした大規模災害による年間被害総額が過去3番目に高い1650億ドル(約23兆円)に達した。
(forbes.com 原文)