消費者物価は横ばいから若干のマイナスとなったものの、生産者物価は6月に前年同月比で5.4%下落。「最新のインフレ率は、中国の内需が連続して著しく減速していることを示唆している」ともカサノバは指摘する。
中国は内外で問題を抱える。国内では、小売売上高が予想を下回り続け、不動産開発業者の新たな債務不履行があるのではいかと20兆ドル(約2770兆円)規模の債券市場に緊張が走っている。
対外的には、6月の輸出が前年同月比12.4%減と予想以上に落ち込んだ。習近平国家主席が輸出を増やしてGDP成長率5%を達成しようと望んでいたとしたら、それ以外の手段を検討する時期が来たということだ。
これは米国にとって良いニュースではない。たとえ中国がパウエルに世界のインフレを抑える手助けをしているとしても、中国の弱い需要は米国やドイツ、日本の政府が今年最も望んでいないものだ。また、韓国や東南アジア、インドなどの経済にとっても良いものではない。
もちろん、状況は変わり得る。過去15年間に中国が数え切れないほど行ってきたように、習近平と李強首相が景気刺激を積極的に行えば、世界の価格予想は急に変化する可能性がある。中国人民銀行がマイナス金利政策をとった場合も同様だ。
しかし今回、中国は慎重になる可能性が高い。習近平は経済のレバレッジ解消のためにここ数年の成長を放棄するかもしれない。流動性を高めることで、中国政府はこれまでなくそうとしてきた不適切な行為を助長するかもしれない。さらに人民元安が進めば、不動産開発業者はドル建て債務の返済が難しくなり、デフォルトリスクが高まるかもしれない。
また、習近平にとって一番避けたいことは、中国が米財務省から「為替操作国」に再び認定されることだ。特に、トランプが共和党の指名を獲得するかもしれない大統領選を来年に控えている今は避けたい。
トランプとそのごますり議員たちは中国と喧嘩をしたくてたまらない。実際、新型コロナ以降、中国の追及は共和党とジョー・バイデン大統領率いる民主党が唯一、意見が一致することかもしれない。
一方で中国はFRBのインフレ問題の解決に貢献し続ける可能性が高い。少なくとも今のところは。
(forbes.com 原文)