「NBAの問題児」が中国最大のスポーツブランドの広告塔に

カイリー・アービング(Getty Images)

中国最大のスポーツウェアメーカー「アンタスポーツ(安踏体育)」傘下のブランドのANTAは7月11日、NBAのスター選手で物議を醸す発言で知られるカイリー・アービングとパートナーシップ契約を結んだと発表した。

アービングは、チーフ・クリエイティブ・オフィサーの肩書きでANTAの商品開発に参加し、インフルエンサーやアーティストらとのコラボを通じ、自身のシグネチャーラインに紐づくアイテムのシリーズを制作するという。

この契約は、反ユダヤ的な映画を宣伝したことでナイキとの契約を失ったアービングにとっては大きな勝利だ。しかし、その一方で、これまでリーグにとって重要な市場である中国との摩擦を避けてきたNBAへの批判を蒸し返すことになる。

NBAへの批判は、ヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGMが香港の民主化デモの参加者への支持を表明するメッセージをツイートし、リーグが中国でのボイコットに直面した2019年に遡る。モーリーはその後、この投稿を削除し、NBAとロケッツもこのメッセージから距離を置いていた。

NBAはその前年に中国で5億人以上の視聴者を獲得し、15億ドル(約2080億円)のストリーミング契約を結んだばかりだった。

一方、2011年のNBAドラフトで3位指名を受け、ボストン・セルティックスなどのチームでプレーしたエネス・カンター・フリーダムは、新疆ウイグル自治区の問題に抗議するメッセージ入りのシューズを履いたことでNBAからブラックリストに載せられたと繰り返し主張し、11日の議会の公聴会でも証言した。

フリーダムは2022年2月にリーグから解雇され、それ以来一度も試合に出ていない。MSNBCのコラムニストのデイブ・ジリンは、NBAの中国に対する「沈黙」が「彼らが人権よりも収益を優先していることの証だ」と書いている。

「地球平面説」を唱えたことでも話題に

2011年からリーグに在籍しているアービングは、2016年にクリーブランド・キャバリアーズでレブロン・ジェームズとともにNBAチャンピオンに輝き、現在はダラス・マーベリックスに所属している。

彼は昨年10月、黒人を抑圧するユダヤ人組織が存在するといった陰謀論を主張する2018年の映画『Hebrews to Negroes: Wake Up Black America(ヘブライから黒人へ:目覚めよブラック・アメリカ)』へのリンクをツイートし、後に削除した。

このツイートにより、当時の所属チームのブルックリン・ネッツはアービングを出場停止処分にし、ナイキは年間1100万ドルと推定される彼との契約を解除した。このツイートに加え、アービングは新型コロナウイルスワクチンの接種を拒否したり、若者たちの間で人気の「地球平面説」を支持したりと、物議を醸す発言の数々で知られている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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