アジア最大の経済大国である中国の今年の景気減速は多くの人々を驚かせた。半年前は、中国が新型コロナウイルス感染症の影響から脱却すれば世界の経済成長と景気を押し上げるというのが圧倒的な見方だった。
だが現実はそうではなく、不動産部門の落ち込みと消費意欲が弱い中で、中国が経済成長目標5%を達成する可能性はますます低くなっているようだ。加えて、中国の消費者物価はまさにデフレの域に陥ろうとしており、需要を回復させるために中国政府が新たな刺激策を講じる必要性が高まっている。
2023年下半期も続きそうな中国の伸び悩みはある種の負の経済ショックだ。原油価格の動向も再評価せざるを得ない。アルミから金、そして鉄鋼や木材、セメントなどの建設資材に至るまで、あらゆるもののコストについても同様だ。
こうした再評価が展開される中、米国のインフレ率はすでに着実に下降に転じている。6月の消費者物価の上昇率はわずか3%で、1年前の3分の1の水準だった。9%強という上昇率は過去40年間で最高だった。
そして今、中国の景気減速は加速しており、パウエルが過去の過ちを取り繕うのを手伝っている。世界第2位の経済大国で貿易大国でもある中国の需要減退は、2023年末までの利上げ継続というFRBへの重圧を軽減している。
パウエルは正しかったというより幸運だったようだ。2018年2月に議長に就任して以来、パウエルは2つの失敗を犯した。
1つは、当時のドナルド・トランプ大統領がツイッターやインタビューでFRBを攻撃していた2019年に、経済が必要としない利下げを行うようトランプにチームをいじめさせたことだ。2つ目は、2021年にインフレ加速の明らかな兆候への対処が遅すぎたことだ。FRBが必死に挽回しようとした結果、銀行を1、2行破綻させることになった。
それでもパウエル体制は続いている。ディスインフーションに満足し、つまずいた中国経済がタイムリーなアシストを提供している。もちろん、中国ばかりではない。経済調査会社キャピタル・エコノミクスのZhichun Huangは、生産コストの低迷も貢献しているかもしれないと指摘する。これは部分的には、1年前のロシアのウクライナ侵攻で世界の商品価格が高騰し、比較のベースが高いためである可能性があるという。
それでも中国は明らかに世界の価格決定力に大きな影響を与えている。中国における完全なデフレを懸念するエコノミストは増えつつある。日本の経験からすると、デフレからの脱却は非常に難しい。