マーケティング

2023.07.30 18:30

超高速を実現する「スーパーカーブランド」だからできること

鈴木 奈央
中道:いま多少は量産しているのでしょうか。

正本:2012年に専用のプロダクションセンターをつくり、今でもそこでのみ生産しています。生産量はマックスで年間6000台ほど。ただし、一般的な自動車工場にあるようなアッセンブリーラインはありません。すべて100%ハンドメイドというのは当初から変わっていません。

中道:最新ではプラグインハイブリッド(PHEV)のスーパーカー「アルトゥーラ」を発表されましたね。ワーゲンからマクラーレンに入られて、ブランドやDNAをどのように感じていらっしゃいますか。

正本:スーパーカーには乗ったことがなかったんですが、乗ってみると衝撃的でした。圧倒的な技術力や開発力を持っているからです。

例えばマクラーレンはF1で最初にカーボンモノコックを導入したのですが、それ以降、F1での死亡事故は劇的に減りました。それぐらい優れた素材を、オートモーティブは1台目からすべての車に搭載しています。

このようにオートモーティブはマクラーレンのレーシングブランドとしての資産をスーパーカーのビジネスにうまく融合させた、ブランド最高の商品を目指しています。それを、まだ認知の少ないマーケットで、自分の力と経験でビジネスとして形づくっていけるのはすごく面白いです。
2023年3月31日 オーストラリア、メルボルンで行われたオーストラリアGPの練習中に、英国のランド・ノリスがマクラーレンMCL36をドライブ(Chris Putnam/Future Publishing via Getty Images)

2023年3月31日、メルボルンで行われたオーストラリアGPの練習にて。車両はマクラーレンMCL36(Getty Images)


中道:大学時代に抱かれていた、サラリーマンにはなりたくない、自分の好きなことをやっていきたいという思いに重なりますね。

正本:そういう意味では自分のやりたいことの方向にどんどんエネルギーを使ってきました。正直に言うと、ワーゲンを辞めた後、異業種のマーケティングをやってみようかと思っていました。自動車業界のマーケティングはいろいろやらせていただいたので。そしたら昔の上司から、「30年間自動車業界に育ててもらったのだから恩返ししろよ」と言われて。たしかにそうだなと。

恩返しというと偉そうですが、集大成としてやってみようと思った時に、たまたまマクラーレンが募集していて、エージェント経由で自分のレジメを送ったのです。そしたらとんとん拍子で話が進んで。当時アジアパシフィックの代表だったジョージ・ビッグスに会い、まだ30代半ばの彼と一緒に仕事をしたら面白そうだと思って入社しました。
次ページ > マクラーレン・ジャパンとしてのこれから

タグ:

連載

VISION TO THE FUTURE

ForbesBrandVoice

人気記事