「そうなると、そもそも人間とは何かを捉え直す必要が出てきます。近代化以降のあらゆる社会システムは、自由な意思決定ができるがゆえに責任を負うことができる自律した自己(近代的自己観)を前提にしていますが、果たしてそれは現代でも正しい人間観なのでしょうか」と七沢氏は問いかける。
実は、テクノロジーの身体化や内面化については、100年以上前から繰り返し学術の世界で言われてきたにも関わらず、そのあり様に主観的に気がついていくべきだという主張はされてこなかったという。
「その結果、テクノロジーが気がついたら問題を引き起こしていた、ということもあるでしょう。これからの時代は、そうした内面化しているテクノロジーに気づき、それらと共に生きている感覚を養い、人間とテクノロジーの境界を超えた視点を前提にした世界観を構築していく必要があるのではないでしょうか」
七沢智樹◎京都大学 農学部卒業後、音楽活動を経て、会計士として活動。その後、メディテーションのためのテクノロジーを研究開発するベンチャーの経営に携わる。現在はテクノロジーを哲学をテーマとしたTechnel合同会社の代表や「技哲ナイト!」、意識の哲学を研究する「意識研」、「西表ジャングルクラブ」などで活躍中。共訳書に『技術哲学講義』(丸善出版)。