働き方

2023.07.14 20:00

生産性の罠から放たれ 「主語を自分」に変えたら起きたこと

石井節子
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都市生活の中で、圧倒的時間不足に陥っていた僕も、長い内省と、ちょっとしたきっかけが重なって家族の拠点を移す決断をした。向かった先は、長野県の軽井沢町。東京からおよそ1時間、標高1000メートルの高原の町だ。ここで、僕の生き方や価値観は明確に変わった。ひとりの個人の変化の物語だ。しかし、僕個人に起こったトランジションの背景には社会の大きなトランジションとの何かしらのつながりがあるのではないかと感じた。

そこで、同じく地方に移住した方にインタビューをして「トランジションラジオ」というポッドキャストを始め、いろいろな人のトランジションの話を聞きながら、起こりつつある変化について輪郭を明確にしていった。その結果、僕に起きている変化の多くを、同じく拠点を移した人が共有していることを実感できた。

この本は、移住をきっかけに自身に起きた内的変化を、同じく移住をした人たちのインタビューを参考にしながら「じぶん時間」の視点で具体的に言葉にしたものだ。本書は決して「移住礼讃本」ではない。移住というのはひとつの選択肢に過ぎない。でも、これだけの人が居を移すというのは、僕たちの社会に生き方の価値観のシフトが起きつつある兆しなのではないかと思う。

コロナ禍は終わろうとしている。それはどのような変化だったのか。そして、あなたはコロナ禍を経て、何を考え、どのようなライフスタイルで生きたいだろうか。この本は、コロナ禍が終わりを迎え、ワークスタイルやライフスタイルがただ元の通りに戻っていくことに少しでもモヤモヤしている人、これまで同様に「成長を無批判に受け入れること」や「生産性の向上を続けること」に違和感を抱えている人に読んでほしい。

きっとあなたが感じているモヤモヤは、未来の新しい生き方への扉なのではないかと思う。本書が、新しい自分へと変わろうと「内なる旅」に出るすべての人にとって、少しでもヒントになればうれしい。


『じぶん時間を生きる TRANSITION』(佐宗邦威著、あさま社刊)

じぶん時間を生きる TRANSITION』(佐宗邦威著、あさま社刊)

文=佐宗邦威

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