宇宙

2023.07.13 14:00

金星の大気からホスフィン検出、生命の痕跡である可能性も

スペクトル線の翼

今回の継続的検出で注目すべきなのは、Greavesのチームがデータの「翼部(wings、スペクトル線の端の部分)」を観測できたことだ。「大気中の吸収線が。大きな波長範囲にわたって広がっていました。実質的にそれは、分子非常に速く動き回っていることがわかりました」とGreavesはいう。「私たちは雲の頂上を見たり、雲の中間部を見たりしていますが、こんなことができたのは初めてのことです」

Greavesは、NASAの探査機パイオニア・ヴィーナス1号が1978年に採集したアーカイブデータの中にもホスフィンの痕跡がある可能性についても明らかにした。

DAVINCI+ミッションが金星に送り込む直径1mの探査機。最終的に金星に向かって自由落下しながら厚い大気を撮影し、化学組成を測定する(NASA GSFC VISUALIZATION BY CI LABS MICHAEL LENTZ AND OTHERS)DAVINCI+ミッションが金星に送り込む直径1mの探査機。最終的に金星に向かって自由落下しながら厚い大気を撮影し、化学組成を測定する(NASA GSFC VISUALIZATION BY CI LABS MICHAEL LENTZ AND OTHERS)

未来の金星ミッション

1985年以来、金星の大気を訪れたミッションはない。しかし、今や地球に最も近い惑星を再発見し、正確に探査しようという動きがある。

ホスフィンやアンモニアなどのガスを探すためには、赤外線を使って金星を研究することが真の優先事項だとGreavesはいう。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)はその能力を持っているが、感度が高いため、金星のように太陽の近くにある天体を観測することはできない。

幸い、今後数年の間に3つの金星ミッションが計画されている。軌道船が2つと着陸船が1つだ。2030年代に着陸予定のNASAの金星ミッションVERITAS(ヴェリタス)は、金星の地質学の歴史を解明するために軌道上で金星表面のマップを 作り、同じ年に着陸予定のESAのEnVision(エンビジョン)は、金星の地下地形を初めて測定する。EnVisionは大気中の微量気体も測定する。

ホスフィンをその場で見つける

しかしNASAのもう1つの金星ミッションであるDAVINCI+(ダ・ヴィンチ・プラス)は、ホスフィンをその場で検出する能力がある。2031年に予定されている到着後の63分にわたる死の降下の最中に、DAVINCI+探査機は金星大気を6回採取し、レーザーを照射して気体を測定する。

「割り当てられるレーザーの波長は4つありますが、まだ3つしか決まっていません」とGreavesはいう。「私たちはホスフィンを提案していて、結果を待っているところです」

JCMTでの観測は続いており、今年、金星が良い位置にいる間に使用できる時間が150時間残っている。「現在金星は地球に近づいています」とGreavesは述べ、金星が大きくて明るい時はずっと観測しやすいことを付け加えた。「だから私たちは今夜ハワイで観測を開始して、明日にはデータが得られます。とても楽しみです」

次の目標は、金星大気中の二酸化硫黄やその他の分子の濃度を監視して、ホスフィンの変化と相関があるかどうか、また、夜間と昼間で濃度が変化するかどうかを調べることだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事