「自治体から法改正後に実証実験をしたいという問い合わせも増えています。7月以降も、エリア内の交通事故率やBIRDの利用状況を見ながら、展開地域や利用時間帯を広げていきたい」(宮内氏)とコメントした。
BRJの「事故ゼロ」は目を見張るものだ。同社が取り組んでいる安全利用に向けた慎重な姿勢とGPSによる仕組みは、今後の事故防止にも期待できるものだ。
未然の事故防止、責任は警察と分散を
7月からは免許がなく車の運転をしたことのない人や、訪日外国人も16歳以上であれば使えるようになった。シェアリングの新規ユーザーに向けた安全啓発や改正法の周知はどのように行なっていくのか。Luupの岡井氏は「交通ルールを理解していない人たちが乗れるようになることは大きな懸念」とする一方で、「新たなルールは自転車に近いものになっており、周知は進みやすくなるのではないか」と回答。これまで安全講習会や利用前の交通ルールテストの連続満点合格の義務付けを実施してきたが、今後の啓発については「一段階厳しくする必要がある」と話す。
BRJの宮内氏は「法整備が進み、事業者に追い風が吹く今こそ、BRJでは地域密着で安全対策を進めていく努力を怠らないことが重要。今後は保険会社とともに危険度の高い道を把握し、周辺での安全啓発活動や試乗会を増やしていく」とコメントした。
両者とも啓発の強化という言い方にとどまったが、交通リテラシーの高いユーザーばかりではないことも考えると、不安は残る。ただ、悪質利用の恐れがある潜在ユーザーに啓発することは難しく、未然の事故防止に関する全ての責任を事業者のものとすることはフェアではない。警察による巡回などのバックアップは不可欠だ。
一方で、LUUPもBRJも、悪質利用者に対してはアカウント凍結という措置を行なっている。
「これまでは警察と状況を確認したうえでアカウント停止をしていました。今後はあらゆる違反が一定のペナルティに繋がるよう、アップデートされた措置を準備しています」(Luup岡井氏)と、取り締まり強化の姿勢を示した。
今回見てきたように、講習会の実施やアカウント凍結対応、GPSによる速度制限、利用時間帯制限など、事業者はリテラシーの醸成や「事故が起きない」仕組みづくりに務めている。ただ、「未然の事故防止」という観点では、安全啓発だけでは不十分だ。岡井氏からあった「最高速度表示灯」を起点とした取り締まりなどを警察が積極的に行い、事故抑止を行なっていく必要がある。個人所有者による利用も増えていくことを考えればなおさらだ。
同時に、取り締まり状況やアカウント停止状況を発信していくことも、抑止力になるだろう。