映画

2023.07.07 08:30

DVD郵送レンタルサービスを停止したNetflixの苦しい現状とは

名作映画はどこで観ればいいのか?

しかし、である。 DVD郵送サービスには、ビデオストリーミングにはない無名の映画がたくさんある。筆者はストリーミングサービスとDVD配送サービスの両方を契約しているが、この20余年、DVDサービスのおかげで、たくさんの欧州やアジア諸国の名作映画を見ることができた。

またDVDなので、ボーナス編として制作秘話などのインタビューを見ることもできた。黒澤明も、小津安二郎も、溝口健二も、山田洋二も、昭和のゴジラ映画もみんなこれで見た。

いわゆる名画座やリバイバル劇場は、アメリカではニューヨークとハリウッドを除いてほとんど存在しない。

あるいは筆者はAmazon.co.jpのプライムアカウントを持っているが、その配信映画の多くは、アメリカのIPアドレスでは作動しないようになっている。ハリウッドの国であるためなのか、外国の映画がアメリカに入ってくる障壁は高い。

そもそも、配信サービスのアルゴリズムだけに依拠していれば、筆者がイラン映画やルーマニア映画やアルゼンチン映画にたどり着くことはなかったのではないか? 

NetflixのDVD配送サービスの「目利き」が各国の名作を集めてきて、その眼力に筆者のように「騙されたと思ってのっかってみた」という映画体験が貴重だったと言いたい。

翻って、日本にはまだ「ぽすれん」などDVD配達サービスがある。筆者の日本の実家では長年愛用しているが、Netflixと比べてサービスが安いし、配達も早く、しかも利用者がディスクを丁寧に扱うので、「かけてみたら画像がフリーズして困った」ということを経験したことがない。名作映画の多くは、日本出張時に「ぽすれん」でまとめて観ているのが現状だ。

媒体の移り変わりに文句を言える立場ではないが、Netflixの配送サービスの真っ赤な非定型のあの封筒に20余年世話になった感謝を現しつつ、今後、自分をどうやってマイナーな名作と遭遇せしめるのか、知恵を絞らねばならない時がきた。

真っ赤な封筒の裏は、今月に入ってから「25年ものご愛顧をありがとうございました」と印刷されたものになった。もう後戻りはないのだろう。

ちなみに、10万作品の膨大なDVDの在庫は、9月を越したらNetflixはどうするつもりなのだろう?

文=長野 慶太

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