経済・社会

2023.07.04 10:30

ハリポタ著者も論争に参戦、マスクの「シスジェンダーは中傷」説の問題点

ローリングは、シスというレッテルを受け入れるのは、性自認が生物学的な性と一致しない人がいることへの同意を含意すると推論している。彼女はそれに同意していないようだ。

マスクやローリングの主張は、シスの人の性自認はトランスの人の性自認よりも正当だと暗に言っている。つまり、シスジェンダーを正常・規範とし、トランスジェンダーを異常・変態とみなしている。「わたしはシスじゃない。普通だ」──。作家でアクティビストのジュリア・セラーノはこうした態度を「シスセクシズム」と名づけている。

一方、シスジェンダーでなくても、この言葉を好まない人もいる。LGBTQ+コミュニティのなかには、シスジェンダーという言葉について、性を「男」と「女」のどちらかに分類する二元論を永続化させるものだと批判する人たちもいる。

南カリフォルニア大学のクリス・フリーマン教授(ジェンダー研究)は「シスジェンダーという用語は性別二元制(ジェンダーバイナリー)をつくり出し、つくり直してきた。この二元的な考え方こそ、多くの学者やアクティビストが何十年も闘ってきたものだ」とアドボケート誌に語っている。

すべての人が出生時の性かそれと反対の性を自認するわけではない。たとえば、性自認が男や女の間で揺れ動く「ジェンダーフルイド」の人や、性自認が男と女のどちらにも当てはまらない「ノンバイナリー」の人は、シスジェンダーでもなければトランスジェンダーでもない。とはいえマスクが、ノンバイナリーの人らが無視されていると感じるのを懸念してシスジェンダーを中傷と認定したとはとても思えない。

マスクやローリングのことをシスジェンダーだというのは、中傷などではなく正確な表現である。ツイッターでこの言葉を禁じることは、トランスの人たちのコミュニティーを疎外し、彼らの性自認を否定することにしかならない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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