政治

2023.03.22

「ドラァグクイーンの絵本読み聞かせ」が米英で物議 極右の標的に

Getty Images

米国と英国では、ドラァグクイーンと呼ばれる女装パフォーマーが子供たちに絵本を読み聞かせるイベント「ドラァグ・ストーリー・アワー」が反LGBTQデモの標的となっている。反対派は、こうしたイベントが子供たちを性的に刺激しているという誤った主張を展開。政治家たちがこの問題を政治化し続ける中、激しい抗議行動や逮捕者が相次いでいる。

米ニューヨークでは19日、マンハッタンのウェストビレッジにあるLGBTQコミュニティセンター前に極右団体プラウド・ボーイズの関係者とみられる人々を含む数十人が集まり、ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官主催のストーリー・アワーに抗議。黄金のマスクをつけた男が他人の顔を殴り、暴行容疑で逮捕された。

ドラァグ・ストーリー・アワーを始めたのは、作家のミシェル・ティーが2015年に立ち上げた同名の米非営利団体。同団体は多様性と包摂性に焦点を当てた文学・創作プログラムを提供しており、世界各地に支部がある。支持派は同団体の活動について、多様性を重視し、子どもたちに読書の楽しさを教えるものだと評価している。

一方で反対派は、ドラァグが子どもを性的に刺激するという誤った主張を展開。昨年以降、各地で抗議運動が起こり、米国の一部の州ではドラァグクイーンが未成年者の前に姿を現すことを禁止する法案も提出された。テキサス、テネシー、カンザスなどの州での法案は、ドラァグショーを「性的」イベントや、未成年者を「わいせつ」なものにさらすイベントとして分類し、未成年者がいる可能性のある公共の場での実施を禁ずる内容となっている。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)をはじめとする政治家は、これらのイベントを「性的なもの」と非難し、中止を強く求めている。一方、ドラァグ人気を一般に広めた番組とされる「ル・ポールのドラァグ・レース」の司会者ル・ポールら、ドラァグ支持派の有名人たちは、各地で相次ぐ反ドラァグ・反トランスジェンダー法制定の動きに反対する声を上げている。

ル・ポールは先週、インスタグラムへの投稿で「ドラァグクイーンはクィア運動の海兵隊だ」とし、支持者に対し、有権者登録をして「あのスタントクイーン(詐欺師)たちを公職から追放し、本当の解決策を持つ賢い人たちを当選させる」よう呼びかけた。

性的少数者の権利擁護団体GLAADによると、米国では2022年、ドラァグ・イベントに対する抗議や脅迫行為が141件あり、その暴力性は次第に増していったという。
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翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

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