スタートアップが提携を決めた「JP未来戦略ラボ」の熱意
──:JP未来戦略ラボが求めていた要素にECOMMIT社が合致したわけですが、一方でECOMMIT社からみると、今回の提携においてはJP未来戦略ラボ以外にも選択肢があったように思います。その中でJP未来戦略ラボをパートナーに選んだ決め手は何だったでしょうか?
ECOMMIT 川野:提携先については、回収拠点というタッチポイントがあることを大前提に、いかに生活者の暮らしに身近であるか、ものを循環させるサービスと事業の親和性が高いかでリストアップを行っていました。当然、日本郵政グループの名前も入っていたわけですが、その日本郵政グループの中からコンタクトしてきたグループの名前が「JP未来戦略ラボ」というのには、正直びっくりしました。
そして何よりびっくりしたのは、踏み込んだ提案内容と、担当の方々の「熱意」でした。話していて、柔軟性がありながらも「熱意」がある。そして、リユース・リサイクルや回収といった業務独特の難しさも理解されていました。一緒に仕事をしたいと思いました。
また、これは別の文脈での話ですが、日本郵政グループといえば、祖業に手紙があります。手紙を届けるというのは、見方を変えると「人と人をストーリーでつなぐ」という手順でもあると思っていました。ECOMMITの掲げる循環商社というストーリーと深いところでつながっている何かがあると思っています。
ECOMMIT 山川:郵便局というのは社会においてシンボリックな存在ですよね。立地も生活密着型で、ある意味、経済合理性とは離れたところにあったりします。そして、雨でも風でも届けてくれる「郵便屋さん」の誠実なイメージ。今でもポストに「ご苦労さまです」と書いてあるのを見ると、顧客との接点、関係値のレベルが違う次元のところにある気がします。
ECOMMITもお客様から物をお預かりして、誠実に循環のサイクルに乗せて行きたいと思っています。そこに誠実というワードにもつながりを感じました。
日本郵政 JP未来戦略ラボ 築地:リサイクル業には、負の側面、倫理に反する再流通や投棄などの問題が内在しているのも事実で、時々、関連した報道が出たりするのは皆さまもご存じの通りです。我々は、適切な循環スキームを作りたいと思っており、その点でECOMMIT社の再流通に対する誠実な姿勢は非常に心強いと感じました。
日本郵政 JP未来戦略ラボ 石井:今回の取り組みは、郵便局に衣料品のリユース品回収BOXを置く(パスト事業)というものになります。日本郵政グループは組織が大きいため、実現にあたっては多方面の調整も必要でしたが、あくまで顧客目線を貫いて実現していきました。結果、多くの人の協力を得て、この取組みをスタートすることができました。
まずはハードルを下げ「意味ある」ムーブメントを
──:ECOMMIT社の事業は、いいこと尽くしのように見えますが、実際は、ご苦労や実現するための工夫もあったと思います。また、川野CEOは「note」(noteが運営する投稿メディア)にもご自身で投稿、発信されています。このあたりの経緯やきっかけについて教えてください。
ECOMMIT 川野:事業を立ち上げて17年目になりますが、まだまだ規模が小さく、最終的に「意味あるムーブメントを起こす」ことが、重要だと考えています。直近で衣料にフォーカスしているのは、廃棄の規模が大きく社会課題としても大きいから、そして、買って捨てるのサイクルも早く、ライフスタイルへの影響が大きいと考えるからです。
ECOMMITでは、年間5000トンの衣料を回収しています。これは国内廃棄量の約1%にあたりますが、ここまで15年を超える歳月を経て、やっとたどり着いています。しかしながら、目指すところはまだまだ遠い上に、地球環境の悪化を食い止めるには圧倒的にスピードアップしていく必要があります。