スタートアップ

2023.07.12 10:00

日本郵政が「郵便局の原点」を胸に鹿児島発「循環商社」と組む理由

石井節子
ECOMMIT 山川 咲 取締役CBO(Chief Branding Officer):「社会システム全体の問題」が存在し続ける一方、その社会を構成する人々の環境に対する意識はこの5年ぐらいで、本当にガラッと変わってきたように思います。

私たちECOMMITで言っても、状況は大きく変化しています。まず分かりやすいところだと、当社の採用の環境変化です。有名な企業や経営の立場を捨ててでも、仕事でこのアジェンダに挑みたいという方が増えています(この分野を仕事にできるという驚きも)。以前は、提携先企業にアプローチしても話を聞いてもらうまでに時間がかかりましたが、今は違います。この分野に参入する方々や他企業のアクションは今や、部署が明確にできて推進されています。

一般の市民にも環境負荷の問題を認識している人は多いです。しかし「何とかしたいけれど、何をしたらいいのか分からない」というのが、本音だと思います。

私はこの4月に開校した「神山まるごと高等専門学校」にも創業メンバー/理事として関わっていますが、教育にも似たようなことが言えると思います。世の中には学校を作りたいと思っている人が数多く存在するのですが、みなさんが「何をしたらいいのか分からない」とおっしゃいます。

この「絶対やったらいいけれど、何をしたらいいのか分からない」という状況に対して、皆さんが「こうすればいいのだ」と思える、わかりやすい参加の仕方を提案していくのも、ECOMMITの大切な役割です。

JP未来戦略ラボの視点は2030年からのバックキャスト


──:JP未来戦略ラボの未来とは、どれぐらい先の未来ですか? そして、本提携を含め、どのようなプロセスを経てアクションアイテムが設計されているのでしょうか?

日本郵政 JP未来戦略ラボ 安部 耕太 部長:今回のECOMMIT社との提携では、2030年を見据えました。そして、アクションアイテムの設計はバックキャスト思考(ゴールからの逆算)で行っています。

日本郵政 安部 耕太(中央)

日本郵政 安部 耕太(中央)


JP未来戦略ラボではグループ横断的な目線で5つの領域を見ています。具体的には「マーケティング」「新サービス」「マネジメント改革」「人事戦略」「フロントライン業務改革」になります。今回の提携では、5つの領域のうちの「マーケティング」を担当するチームが中心となって進めたものです。

マーケティングチームでは、2030年の世界を展望する際に、お客様の潜在ニーズを捉えること、即ち「お客さまの徹底理解」が必要と考えました。DX等、世の中の流れやお客様の潜在ニーズを踏まえた将来の社会像を起点としたバックキャスト思考が本プロジェクトのはじまりです。

日本郵政 JP未来戦略ラボ 石井 雄飛 グループリーダー:マーケティングチームでは、「お客さまの徹底理解」を進めていくにあたり、普段郵便局に来ていただいているお客様ではなく、普段来られないお客様、平たく言うと「非ユーザー」の声に耳を傾けました。

日本郵政 石井 雄飛

日本郵政 石井 雄飛


すると挙がってきたのは、日々のちょっとした困りごとの解消、たとえば「衣類の処分・回収」などでした。ネットオークションやフリマサイトで売れるのは分かっているけど、そこまでの手間をかけたくない、そういった声でした。

日本郵政 JP未来戦略ラボ 築地 哲平 グループリーダー:こうした調査結果を受け、我々もECOMMIT社と同様にエコに対する消費者の意識の変化を目の当たりにし、新規の探索領域として衣料回収のアイデアが出ていました。実行に移すためにパートナー企業を探していたのですが、一口に衣料回収といっても実務で手掛けている範囲にも差異がありました。

日本郵政 築地 哲平

日本郵政 築地 哲平


ECOMMIT社は、回収ボックスという仕組みを既に持っている点で、JP未来戦略ラボが求めていたパートナーの要素とばっちり適合したのです。
次ページ > 「JP未来戦略ラボ」の熱意とは──

文=曽根康司 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事