「AI革命」にどう備えるべきか?
開催2日目の28日には、「Keeping Up: AI Readiness Amid an AI Revolution」(キーピングアップ: AI革命下におけるAIへの備え)が行われた。セッションにはドイツのハーティー・スクール教授ジョアンナ・ブライソン、ルワンダのICT・イノベーション大臣ポーラ・インガビレ、中国発のIT企業Neusoft会長のリュウ・ジレン、コーザルAI(人間のように推論し、選択できる技術)を活用しビジネスを展開する英国発企業causaLens CEOのダルコ・マトフスキーの4人が登壇した。ルワンダでICT関連の政策を推進するインガビレは、AIが最も破壊的なインパクトをもたらす可能性がある分野として医療、農業、公共サービスを掲示。「政府が先頭に立ってAIを活用したソリューションを導入し、国民の間に(AIを取り巻く環境への)信頼を構築する必要がある。そうすることで民間企業も取り組みやすくなる」と述べた。
AIの活用については、データの取得やプライバシーの問題など検討すべき課題も多い。AIや倫理の専門家であるブライソンは「これまで多くの人が私に『どうすれば人々に、AIに対する信頼感を抱かせることができるのか』と尋ねてきたが、これは誤った質問だ」と指摘したうえで、こう述べた。
「私たちは、AIを手掛けている人々やAIを規制している人々について話す必要がある。私たちが今、信頼に対する課題を抱えている理由のひとつは本来得られるべき情報を得られていないこと、そして透明性が十分に確保されていないことにある」(ブライソン)
一方、コーザルAIの研究でも知られるマトフスキーは「(AIを用いた)意思決定においては、アルゴリズムが何をしているのかを真に理解する必要がある」と説明。「『なぜ』に答えることができるAI」の研究こそが、人々のウェルビーイングに影響を与える意思決定には重要だと強調した。
技術革新が急速に進むなか、AIの利用や開発に対する規制は必要なのか。折しも欧州議会は6月14日に、AIの規制法案に生成AIへの規制も盛り込んだ修正案を採択した。マトフスキーはEUの法案について「何がハイリスクで、何がクリティカルで、何がノーリスクで規制対象外なのかを明確に分けている」と評価しつつも、「最善の意図を持った規制であっても、実施方法や施行方法を間違えば創造性を損なうことにもなりかねない」と警鐘を鳴らした。
インガビレは「政府がオーケストレーションの主導権を握るべきだと考えるのは当然だと思うが、重要なのは、政府だけではそれを実現できないということだ」と指摘。AIの技術や産業が成熟していく過程ではパートナーシップやコラボレーションが必要だと述べた。
教育から医療、日々の暮らしに至るまで、AIの存在感は高まるばかりだ。もはや誰一人として「部外者」ではいられない。政治やアカデミア任せにせず、さまざまなステークホルダーが緊密に連携しながら新たなフレームワークを構築することが求められている。