低レベルの大気汚染で4日も新型コロナ患者の入院期間が長期化

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二酸化窒素(NO2)やブラックカーボン(黒色炭素)などの低レベルの大気汚染物質にさらされると、新型コロナウイルス感染による入院期間が4日間延びる可能性があるとの研究結果が、今月の欧州呼吸器学会誌『European Respiratory Journal』に発表された。

この研究は、新型コロナ流行の波が繰り返し押し寄せたこの3年間、病院に患者があふれ、医療システムが世界的にひっ迫した主な要因の1つが大気汚染だったことを改めて証明している。

研究著者の1人であるデンマーク・コペンハーゲン大学のゾラナ・ヨバノビッチ・アンデルセンは「大気汚染がいかに私たちの免疫系を損ない、新型コロナをはじめとする呼吸器感染症にかかりやすくしてしまうかを示す結果だ」と述べている。

アンデルセンはまた「大気汚染の低減を現在と将来のパンデミックに対する予防措置の中心に据え、季節性インフルエンザ対策にも組み込むべきだ。空気がきれいになれば、呼吸器感染症、季節性伝染病、将来の大きなパンデミックに対する人々の耐性も高まる」と訴えている。

研究チームは、ベルギーで2020年5月~2021年3月に新型コロナ陽性と診断された入院患者328人について調査した。対象者の平均年齢は65.7歳で、研究期間中にワクチン接種を受けた人はおらず、半数以上がうっ血性心不全の診断を受けていた。

研究チームは同時に、調査期間中の大気汚染レベルを分析し、特にブラックカーボン、微小粒子状物質(PM2.5)、二酸化窒素などの大気汚染物質に注目。各患者から血液サンプルを採取し、体内にどれだけのブラックカーボンが浸透しているかを測定した。

すると、血液中にブラックカーボンやすすが検出された患者は、大気汚染物質に曝露されていない患者と比較して、ICUに入るリスクが36%高いことがわかった。ブラックカーボンは肺疾患を引き起こすことが知られている。

研究対象者の平均入院期間は約17日で、男性は女性よりも入院日数が多い(約4日かそれ以上)傾向にあった。粒子状物質と二酸化窒素が血液中から検出された患者は、他の患者と比べて入院期間が4日以上長かった。研究チームは「高濃度の大気汚染物質を吸入すると、肺管内の粘膜に炎症が生じ、新型コロナウイルス感染の経過に影響する可能性がある」と説明している。

研究チームはさらに「今回の発見は、比較的低レベルの大気汚染物質にさらされると、曝露が最近であっても長期的なものであっても、新型コロナ感染患者の重症度と進行に著しい影響を及ぼすことを示している。この知見の公衆衛生上および臨床的な重要性は過小評価されるべきではない」と指摘。研究結果に基づけば「比較的低濃度であっても大気の質が改善されれば」新型コロナの治療効果は40~80%上昇するとしている。

また、これらの知見は「新型コロナによる負担を限定し、世界中で呼吸器の健康状態を改善するため、大気汚染レベルを低減する行動を求める呼び掛けを裏づける」と述べている。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

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