睡眠時無呼吸症候群の人、コロナ後遺症のリスク高 米研究結果

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新型コロナウイルス感染症にかかった米国人約220万人のデータを調べた最近の研究で、睡眠中に息の通り道である上気道が狭くなって起こる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」の成人は、睡眠障害のない人に比べ新型コロナ後遺症(ロング・コビッド)の発症リスクが75%ほど高い可能性があることがわかった。

研究成果は先週、専門誌「Sleep」に発表された。論文のシニアオーサーであるニューヨーク大学グロスマン医科大学院の疫学者、ローナ・ソープは報道向け発表で「OSAの人はワクチン接種を定期的に受けて感染リスクを最小限に抑える」よう勧めている。

OSAの人は睡眠時に上気道が何度もふさがるため呼吸が乱れたり睡眠が浅くなったりし、血液中の酸素飽和度が下がることもある。米国では成人の約20%がOSAを患っているとされる。睡眠時無呼吸症候群と糖尿病や肥満症、高血圧症といった生活習慣病との間に関連性があることも明らかになっている。

研究チームは、米国立衛生研究所(NIH)の資金支援を受ける新型コロナ後遺症の研究イニシアチブ「RECOVER」に参加している3つの研究ネットワークから電子健康記録を入手し、解析した。対象者は2020年3月から2022年2月の間に新型コロナと診断されていた。

このうち成年の約5%はOSAの診断も受けていた。解析結果からは、OSAの成人は新型コロナ後遺症を患うリスクが75%高いことが明らかになったほか、リスクの上昇は肥満症など別の病気を同時に抱えがちなことと関係している可能性があることなどもわかった。「肥満はOSAと急性コロナ感染の重症化の両方でとくによく知られた危険因子」だと研究チームは言及している。

OSA患者の性別で比べると、新型コロナ後遺症のリスクは女性のほうが高いことも判明した。男性の発症リスクが59%高くなっていたのに対して、女性は89%も高くなっていた。

NIHによると、女性の場合、妊娠中や閉経期、閉経後に睡眠時無呼吸症候群になりやすくなる可能性がある。また、卵巣に嚢胞(のうほう)と呼ばれる病変が多数できて排卵がうまくされなくなる病気「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」の女性も、睡眠時無呼吸症候群のリスクが上がる可能性があるという。

ソープは「睡眠時無呼吸症候群の危険因子の多くが新型コロナのアウトカム(経過・結果)の危険因子でもあること」を課題のひとつに挙げ、「こうした関連性が認められる理由は完全にはわかっていない」と説明している。

OSAと新型コロナの関連性は昨年発表された複数の研究でも示されていた。ある研究では、OSAの人はそうでない人よりも新型コロナで死亡するリスクが高いことがわかったほか、21の研究をメタ解析した別の研究でも、OSAと、集中治療室(ICU)に入ったり人工呼吸器のサポートを必要としたりするような新型コロナの重症化の間には有意な関連性が認められた。

米国立睡眠障害研究センター(NCSDR)のマリシュカ・ブラウン所長は「新型コロナウイルスによる長期的な影響については学ぶべきことがまだたくさんあるが、今回の研究は、とくに注意して経過を観察することが有益な患者はどういった人なのかに関して、臨床ケアに知見を与えてくれたのではないか」とコメントしている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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