環境負荷の低いリチウム電池の作り方、三井物産が挑戦

リリースベース(松村)

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EV用のリチウム電池をはじめ、脱炭素対策の立役者であり需要が急激に伸びているリチウムですが、リチウムの製錬が環境に大きな負荷をかけている事実はあまり知られていません。

リチウムの精製には大きくわけて、塩湖の水から採取する「かん水産」と、鉱物から取り出す「鉱石産」の2つの方法があります。現在主流の「かん水産」は、塩湖からくみ出した塩水を広大な「塩田」で濃縮してリチウムを取り出すため、塩湖周辺の環境保護が課題になっています。リチウム埋蔵量世界1位のチリでは、塩湖の水資源が枯渇し、そこに生息するフラミンゴの数が減少も報告されています。原住民との摩擦も問題視されるなど、世界の脱炭素化の動きのしわ寄せが出ている形です。

近年注目されているのが「鉱石産」です。鉱石産を進めるオーストラリアは、リチウムの埋蔵量は世界2位ながら生産量は世界一となっています。それは、鉱石産のほうが作業工程が多くコストがかかるものの、かん水産よりも早く生産できるためです。鉱石産にも有害廃棄物などの問題がありますが、いちばんの課題は熱処理による二酸化炭素の排出量です。

そこで三井物産は、電子レンジと同じマイクロ波を使ってリチウム鉱石の製錬を行う世界初の技術の確立して世界展開することを目指し、マイクロ波化学と共同開発契約を締結しました。マイクロ波化学は、「100年以上変わらない化学産業を革新し、モノづくりの世界を変革する。マイクロ波プロセスをスタンダードに」を理念に掲げる化学企業です。おもに化学プラントの加熱工程をマイクロ波で電化する事業を進めていますが、2014年にはマイクロ波を使った大型化学プラントの製造プロセスを世界で初めて開発。その後、鉱山向けのマイクロ波技術プラットフォーム「Green Mining-MX」を構築しています。

三井物産は、この技術を世界展開し、「低炭素リチウム」の安定的なサプライチェーンを構築するとしています。これが実現してオーストラリアの鉱山に導入されたならば、政治的に安定したオーストラリアから低炭素リチウムが輸入できるようになり、脱炭素化に大きく貢献することでしょう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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