入浴習慣が熱中症予防につながる可能性、リンナイと九大が発見

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消防庁が発表した、6月12日〜6月18日の全国の熱中症による救急搬送数は1843人(速報値)。前週(900人)の2倍超に上った。特に梅雨の時期は真夏ほど気温は暑くないものの、湿度が高く汗をかいても熱を体の外に逃がしにくいため、注意が必要だという。

6月21日、そんな熱中症の予防に入浴習慣が効果的であるという可能性が、リンナイと九州大学大学院の共同研究チームから発表された。熱中症の対策には、暑さに慣れることで徐々に暑熱環境への耐性を得る暑熱順化が有効とされているが、近年はエアコンの普及や運動不足などがそれを妨げている。人為的に暑熱順化するためには、人間にとって強い温熱負荷が必要になる。

日々の入浴は発汗機能を高め、暑熱順化を促すと考えられているが、これまで入浴習慣がどの程度、暑熱環境(熱中症のリスクが存在する環境)への適応能に関係しているかは、十分には明らかにされていなかった。そこで、研究チームは入浴中の発汗を含む体温調節機能を測定し、浴槽に浸かる入浴習慣が体温調節機能の個人差に影響するかを明らかにするため、実験を行った。

実験対象は、健康な男性32名。実験室の環境は室温28℃、湿度50%、浴槽の湯温は41℃に設定された。対象者は実験開始後10分間、浴室内で椅子に腰掛けて安静にし、その後浴槽へ移動。20分間入浴してから浴槽を出て、椅子に腰掛けて15分間過ごした。別途、対象者には入浴習慣についてのアンケートを行い、対象者ごとの入浴スタイルや入浴時間などを調べた。

実験方法

「入浴習慣あり(浴槽に浸かるのが週4日以上)」と答えた12名と、「入浴習慣なし(浴槽に浸かるのが週4日未満)」と答えた20名の発汗量と血流量をグラフで比べてみると、「入浴習慣あり」のグループの方が入浴中・出浴後に発汗量が大きく、血流量が早く上昇している(血管拡張が早い)ことが判明。「入浴習慣なし」のグループを上回った。これらの結果は、年齢や運動習慣、BMIの影響を考慮しても変わらなかった。

入浴時間の経過における「発汗量」のグラフ

入浴時間の経過における「血流量」のグラフ

研究グループはそれらの結果から、高強度の暑熱・運動負荷トレーニングをしなくても、日常的に入浴によって暑さに繰り返し晒されることで、熱放散機能が向上し、熱中症や夏バテの予防につながることが示唆されたと考察した。

「入浴」に関する有識者で東京都市大学 人間科学部の早坂信哉教授は、一定数の対象者で医学的に行われた実験であり、グラフでも入浴習慣の違いで発汗や血流の差がはっきりと出ていることから、有意義な結果だとコメント。さらに「熱中症や夏バテの予防のためにも、暑くなる前から、お風呂では浴槽に十分に浸かり、それを習慣づけて暑さの対策をしていただきたいと思います」と説明した。


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Forbes JAPAN Web編集部

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