こうした親は、友人のために恋文を代筆したシラノ・ド・ベルジュラックよろしく、Zoom面接で何を言ったらいいか子どもにささやいたり、職場での子どもの待遇をめぐって上司に文句を言ったり、子どもの仕事の内定や給与交渉でおせっかいを焼いたりもしているという。
とくに今は経済や雇用市場の競争が非常に激しいから、そこでの子どもの成功をあと押ししてやりたいという親心なのだろう。新型コロナウイルス禍の前はほとんどの人がオフィスで勤務していたので、親はこうした干渉をしにくかった。しかし、親も子どももリモートワークやハイブリッドワークをするようになった結果、親は子どものやっていることに立ち入りやすくなった。子どものほうも、コロナ禍中のソーシャルディスタンスによって対人のコミュニケーションスキルが落ちていたりして、親が仕事のことに口出しするのを許しがちになっているかもしれない。
親世代は社会経験が豊富なため、子どもの大局的な問題について、メンターのような相談役になりたいと考えるのだろう。親はたしかに、自分が職場で得てきた教訓や、キャリアを歩んでいくうえで注意すべき点などを子どもに伝えることはできる。
やり過ぎは禁物
一方で、親が子どもの仕事を管理しすぎると裏目に出かねない。子どもが自分で学び、考え、成長する能力を妨げてしまうからだ。自分で考えて動く経験を積んでいないと、若者は内面に自信をつけることができず、何年たっても親の助言に頼り続けてしまうかもしれない。また、親が子どもの仕事上の事柄にかかわりすぎると、その若者は雇用主から社会人失格とみられてしまうおそれもある。コミュニケーションをきちんととれる、誰かに頼らずに自分の仕事をこなせる、率先して動けるといった、社会人に必要なスキルが著しく欠けているとみなされてしまうのだ。その結果、採用を逃したり、解雇されたりしてしまう可能性もある。