どうすればグローバルレベルで戦略や目標を社員個々人に伝えられるか、リーダーやマネジャーはいっそう気をつける必要が出てきました。オフィスに行けば従業員と話ができて、その情報が自然と社内に広がるなどと思っていてはダメなのです。そのため、世界中に散らばる従業員とコミュニケーションをとる方法を学ぶ必要がありました。
ここ数年のパンデミックで医療危機が発生し、今は米国を中心にマクロ経済的な課題も発生しています。こうした状況を乗り切るために、企業はより機敏に、よりレジリエント(弾力的)にならなければいけません。弾力のある企業文化を築き、ビジネスとして直面するあらゆる状況に耐えられるようにする。これらは、すべてのビジネスリーダーがここ数年の間に対処しなければならなかったことだと思います。
──スタートアップだったBoxも今ではグローバル企業ですね。起業家として自国内での危機に対処することと、世界各国にオフィスを構えるグローバル企業のCEOとして世界的な危機に取り組むのとでは、その対応も変わってくるかと。グローバル企業CEOとしての難しさはどういったところにあったでしょうか。
近年はやや特殊な状況だったとも思います。ロシアによるウクライナ侵略が一例です。 Boxはポーランドにもオフィスがあり、従業員が安心して仕事ができるよう環境を整える必要がありました。
グローバル企業ともなれば、さまざまな力学に直面します。例えばコロナ禍へ取り組み方では、日本と、米国や欧州とでは異なるように、世界は課題に対してさまざまなアプローチが存在することを知りました。そのような異なる地域の文脈を、ビジネスの進め方や規模に応じた経営手法に統合する方法を見つけなければなりません。
──今まさに“AIブーム”の真っただ中にいます。でも過去に1974〜80年頃、1987〜93年頃と2度にわたる、通称「AIの冬」もありました。今回のAIブームは今までのそれとはどう異なり、Boxの製品にどのようなインパクトを与えるのでしょうか?
今回の“AIブーム”は、これまでのどれよりも将来の礎になるようなものではないでしょうか。その理由は、一般的なAIモデルが、あらゆる種類の企業のユースケースを解決できる力をもつことからです。それに、今の大規模言語モデル(LLM)には、より水平的で汎用性の高い性質があります。法律や人事、マーケティングなど、通常であれば専門家に相談しなければならないような質問にも、1つのAIエンジンで答えることができます。
AIモデルは、これまでよりもはるかに多くのデータセットで訓練されています。結果として、より多くのこと瞬間的に対応できます。以前のAIではほぼすべてのユースケースに対し、個別のAIモデルを用意する必要がありましたが、今は幅広いユースケースを解決できる汎用的なAIモデルを用意できます。現在のテクノロジーは、以前よりもはるかに強力で、洗練され、本質的に“インテリジェント(知的)”になっています。