30U30

2023.06.10

「科学オタク」な救世主 女性の健康寿命延長へ

ディナ・ラデンコビッチ

女性の生殖器の老化は体のほかの部分より5倍も早い。人生100年時代といわれるいまも30代後半に生殖機能が低下することには変わりなく、不妊症や更年期障害などに悩まされる人が多い。そこでディナ・ラデンコビッチ(28)は生殖器の老化を遅らせるニーズに目をつけた。

2021年に創業したスタートアップ・Gametoは、細胞が他の性質の細胞に変化できるようにする技術で、のちに卵子や子宮内膜細胞になる細胞を作り出す。これにより卵子減少や生殖器老化に対応する。不妊治療では採卵がより安価で安全になり、痛みのあるホルモン注射や副作用、治療費減少が期待される。

ラデンコビッチは戦争で荒廃したセルビアで生まれ、英国で数学、工学、医学の学習にのめりこむ。Gameto創業前には、米ハーバード大学の遺伝子研究所で細胞の研究をした。「生殖器の長寿化は女性の生き方を根本的に変えます。男女の健康の公平性が高まり、女性が働きやすくなる。子どもをもたずにキャリアを積んだり、不妊症や更年期障害の治療技術を活用する選択肢が出てきたのです」。Gametoは女性が人生で直面する問題を減らそうとしている。

22年6月より米国では人工中絶を認めるか否かが各州に委ねられることになった。Gametoは多数の州の病院と連携しており、サービスも州ごとの法律に対応せざるをえなくなった。「女性の健康に関して分断されている多くのことにもっと光を当てるべきです。女性の健康と平等実現のために活動していきたい」


ディナ・ラデンコビッチ◎セルビア生まれ。Gameto共同創業者兼CEO。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)卒業。細胞工学や老化についての研究を行う医学博士。北米版「Forbes 30 Under 30 2023」に選出。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=ティム・タダー

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